人間界への旅立ち
そこから、あっという間に一ヶ月ほどの月日が流れた。
ペルセは、家族全員と一緒に、大きな荷物を持ってサトゥニアの町にある、魔王城の前に来ていた。
数日分の着替えと、ハイーラたちと共に用意した日用品のセット。そして、ちょっとした玩具。それらが全て、スーツケースに詰まっていた。
「アモディエナさーん」
ペルセは門の前で、手帳を眺めていた待っていたアモディエナに声をかけた。アモディエナはそれを受け、手帳から視線を外し、ペルセの方に目を向けた。
「…思ったよりも早かったな、ペルセ」
「えへへ。楽しみで早く来ちゃった」
「それでいいさ。それにしても…」
アモディエナはそう言うと、気恥ずかしそうに笑っているペルセの背後へと視線を向けてきた。
そこには、クロニオスとデメナ、そしてマールとハイーラが勢揃いしている。
「随分と賑やかなお見送りだな」
「皆来るって言って、聞かなくって…」
アモディエナの言葉に、ペルセも自身の背後を見ながら、ポツリと呟いた。
皆して、今日だけは無理矢理スケジュールを空けてでもペルセを見送りたい、と言って譲ってくれなかったのだ。ペルセにとっては嬉しい反面、かなり気恥ずかしかった。
アモディエナは静かに笑っていた。
「…まぁいい。この先に、人間界…エストラの校門へと向かう転送陣を用意している。最初は俺が付き添うが、向こうに着いたら、向こうの先生の言うことに従うんだぞ」
「分かりました!!」
ペルセはそう言うと、思わず敬礼のポーズをとった。
すると、後ろからクロニオス達が声をかけてきた。
「ペルセ。何かあったら、いつでも連絡してこい。俺らでも、ハイーラたちでも構わん。…俺らはずっと、お前の味方だ」
「人間界、楽しんできてくださいね。土産話、期待してますよ」
父と母からの、温かい言葉。その言葉に、ペルセは胸が熱くなった。
立て続けに、ハイーラ達が口を開いた。
「ちゃんと寝なさいよ?健康第一、ちゃんと規則正しい生活を…」
「こんな時に、そんな小言はないでしょ〜?…エストラでの学校生活を楽しんでくれればいいよ〜」
真面目なハイーラらしい言葉を、マールが遮っている。こんな場ですら、この二人はまるで変わらなかった。
ペルセは四人の言葉を受けて、力強く頷いた。
「皆、ありがとう!!行ってきます!!」
ペルセはそう言うと、大きく手を振った。それに対し、デメナとマールは手を振り返してくれた。クロニオスとハイーラは、何も言わずにペルセをじっと見ているだけではあった。だが、その表情は、きわめて穏やかだった。
「…今生の別れでもあるまいに。行くぞ、ペルセ」
「はい!」
アモディエナはそう言いながら、歩き始めた。ペルセもその後をついていく。
アモディエナの歩くペースは、大荷物を抱えてるペルセに合わせてくれているのか、とてもゆっくりだった。
しばらく歩くと、青く光る転送陣が見えてきた。
「…これに入れば、人間界に行ける。離れるなよ」
「うん…分かっています」
ペルセは素直に、アモディエナの服の裾を掴み、転送陣の中へと入った。
ーーーいよいよだ。
アモディエナが何か呟くと、転送陣が青く光り輝き、ペルセの視界を真っ白に包みこんだ。




