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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一章:中位の町・べリアス
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物語の転換ーペルセの大移動ー

「…この前、『たまにはそっちから来い!』って怒られたっけ〜」


 マールが、何か言っている。

 けれど、頭に入ってこない。


「持ってきてもらっても、腐らせちゃうからな〜。前もらった食料も、確かもう腐らせちゃったし〜」


 …今、何て言った?


 ――そんなこと、できるのか。


「…え?持ってきてもらう…?」

「あれ、口に出てた〜?まぁいいや〜」


 マールは気にした様子もなく、言葉を続けた。


「私、こんな性格だからさ〜、知り合いに食料を持ってきてもらうんだ〜。ただそれで、前怒られてね〜」

「怒られる…?」

「うん。『ムダにするくらいなら、せめてそっちから来なさい!』ってね〜」


 …話を聞いて、余計に分からなくなった。

 食事を持ってきてもらう、というだけでも意味がわからないのに、それを腐らせるとは。マールは、普段何をしているのだろうか。


「せっかくだし〜、一緒に行く〜?」

「え…?」


 呆然としていると、突然マールから誘われた。まるで、遊びにでも行くかのような軽さだった。

 ダスノムで暮らしていた頃だったら、誰かに食料をせびるなんて、自分がやる以外で許されることはなかった。なのに、こんな軽いーーー。


「う…で、でも…」

「…あ、そっか〜。さすがに説明もなしで向こう行ったら、なんか言われそうだよね〜」

「え、いや…」


 自分の分の食事なんて、向こうは用意してないはず。そう言おうとしたが、ペルセが口を開く前に、少し変な方向でマールが納得していた。

 ペルセの言葉も聞かず、マールは自分のこめかみを指で軽く叩いた。


「ん〜…」


 何をしているのだろうか。ペルセからは、ボーッとしているようにしか見えない。

 マールの口元が、わずかに動いている。何か呟いているのだろうか。しかし、声は全く聞こえない。

 しばらくすると、マールは指をこめかみから離した。


「…何してたの…?」

「向こうの知り合いに、キミのことを伝えてたの〜」

「は…?え、ど、どうやって…?」


 どう頑張っても、喋ってるようには見えなかった。周りを見ても、マール以外に話ができる相手は、自分しかいない。

 一体、何をしていたのか。それを考えてると、マールは優しく手を握ってきた。


「これで問題解決〜。じゃあ、行こっか〜」

「何が!?って、え!?今から!?」

「…お腹、空いてるんでしょ?」

「う…」


 マールの問いに答えるように、再び小さくお腹が鳴った。体は嘘をついてはくれない。


「…でも、どうやって行くの?まさか、歩き…?」

「そんなに歩くわけないじゃ〜ん。ちょっとついてきて〜」


 さすがに今の空腹なままで、長い距離歩くのは辛い。そう思って聞いてみると、マールはおもむろに、ペルセの手を引き、家の外へ出た。


 ーーーオーレンとは違う。オーレンは、ペルセの手を引っ張ってきた。手を離せば、すぐに置いていかれそうなほどに、強く。

 マールは、明らかにペルセの歩くペースに合わせてくれている。たとえ、自分が止まったとしても、マールは置いていかない。そう、感じられる何かがあった。


「お、これこれ〜」

「…ナニコレ?」


 玄関前には、家に来た時にはなかった、魔法陣のようなものがある。それは、青く、不気味な光を放っている。見ているだけで、吸い込まれそうな感覚があった。


「これを使うと、知り合いの家の近くに行けるんだ〜」

「え、使うって、これ、どうやって…?」

「ま〜、入ってみたら分かるよ〜」


それだけ言うと、マールはそのまま魔法陣に足を踏み入れた。そして、ペルセを優しく招き入れてきた。


「…よ〜し、じゃあ、いくよ〜。ちょっと、目を閉じてて〜」

「あ、う、うん…」


訳も分からないまま、言われるままに目を閉じる。

耳に、何かが弾けたような、鋭い音が入る。と同時に、閉じたまぶた越しにも分かる、強烈な光が放たれた。


「うっ!?」

「ん〜…」


ーーーこの移動が、物語を大きく動かすことになるとは、この時は、まだ誰も知らないーーー

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