保護者の心配
ペルセはアモディエナが置いていったパンフレットを開く。
その中には、学長と書かれた人物の写真と、長々とした学校の理念が書かれていた。いろいろと小難しい話が記されており、ペルセにはよく分からなかった。
そこからさらにページをめくると、生徒達が実際に魔術学校内で授業を受けてる写真や、実技として魔力を放ったりして、鍛錬をしてるように見える写真が掲載されていた。
「ペルセちゃん。行きたいの?」
「…分かんない。でも、興味はある」
行きたいかどうか、それはまだ分からない。だが、興味を惹かれてるのも事実だ。それゆえ、ハイーラへの返事も、曖昧なものになってしまった。
人間界。
自分がそこへ行くチャンスがあるのか。
どんなところなのか。人伝いではなく、自分の目で、耳で、肌で確かめることができる。
「ま〜…今すぐ決めろって話じゃなかったっぽいから、今この場で結論を出さなくてもいいんじゃな〜い?」
マールは眠そうな様子で、おにぎりの最後の一欠片を口に運んでいた。相変わらずのマイペースぶりで、ハイーラも思わず頭を抱えてるようだった。
「そうなんだけどさ…あんた、もう少し深刻に捉えてよ?留学が何日間だとか、そのへんはこれからなんでしょうけど…」
ハイーラはマールの額を軽く小突いた。マールは額を抑えながら、少し不満そうにハイーラを見つめている。
もし留学に行くとなったら、この二人の軽快なやりとりをしばらく見れなくなるのか。一日や二日ならまだしも、何日間も会えないとなると、それは、かなり寂しい。
「…どうしよっかなぁ…」
ペルセはポツリと呟いた。すると、その独り言を聞き取ったのか、マールがペルセの頭にそっと手を置いてきた。
「ゆっくり、考えれば良いよ〜。私達にも経験はないから判断はできないけど〜…でも、ペルセがどういう決断をしても、私達は否定しないよ〜」
「マール!?勝手に何を…!」
「え〜?否定しちゃうの〜?」
マールの言葉に、ハイーラは言葉をつぐんでしまった。言い返すことができないらしい。
普段はマールに小言をいうハイーラでも、時折マールに勝てないことがある。それも、この10年の付き合いで分かってきたことだ。何だかんだで、マールもハイーラの性格や扱い方を熟知しているらしい。
でも、二人とも自分を心配してくれてるのは分かった。
「…とりあえず、ご飯食べよっか〜。ここでああだこうだ言ってても、仕方ないし〜。パンフレットは、家でゆっくり見よう〜」
マールのその言葉に、はっとさせられる。
ペルセの手元の弁当箱には、まだご飯がのこっているし、ハイーラの手元にも食べかけのおにぎりがあった。食べ終わっていたのは、マールだけだった。
ペルセはハイーラお手製の弁当を味わいながら、ゆっくりと食べ切ったのだった。
ーーー今日も、美味しかった。




