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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第一章 異世界での困りごと

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相談の本質

「…大体は、お手紙で書いた通りですわ」


 イアノは言いにくそうに顔を伏せ、そう返してきた。しかし、その奥に眠る魂の動きを、デメナは見逃さなかった。


 ウソをついてる、というわけではない。しかし、目を凝らすと、若干言いにくいことがある、といった揺らぎだ。デメナの能力を持ってすれば、そんなことはお見通しであった。


「…質問を変えますね。知ってる範囲で構いませんので、ヴァーレアさんの契約相手である人間の家事能力がどこまでまずいのかを、聞かせてください」


 デメナがそう言うと、イアノは顔を上げ、苦笑いを浮かべた。


「…やはり、お見通しですわね」

「私達の魂魄干渉の能力の前に、隠し事なんて無意味でしょう。この能力を持つあなたも、ご存知のはずですよ」


 そう言うと、二人は互いにクスクス笑った。


 デメナの一言で肩の力が抜けたイアノは、軽快に話し始めた。


「妹から聞いた話ですので、どこまで本当かは不明ではありますが…相当、酷い模様です」

「酷い、とは?」

「簡潔に述べるなら、妹の契約者…ラウラさん、という方なのですが、その方の自宅は、ゴミ屋敷だそうです」


 ゴミ屋敷。

 イアノのその言葉を聞いて、デメナはゆっくりとお茶をすすった。


 手紙の中でも、生活能力が壊滅的だとは書かれていたので、驚きはしたが予想の範囲内ではあった。


 だが、イアノの言葉はまだ続いた。


「しかも、人間界の行政から勧告を受けるほどに、外にもゴミが溢れ始めてる、らしいですわ」

「行政から…?」


 その言葉を聞き、さすがにデメナも言葉を紡げなくなった。


 魔界では、事務や総務を統括するアモディエナの部署の監督の下、ゴミは適宜回収し、ダスノムに新設した大規模な処分施設で処理している。

 人間界での仕組みがどうなっているのかは分からないが、ラウラという人間は、行政に文句を言われるほどに片付けができないのか。


 ーーーそこまでいくと、確かに非常事態だ。デメナは、ようやく緊急性を理解した。


 しかも、手紙の内容によると、空間の魔力濃度が高すぎて、人間では対応しきれない、との話だったと記憶している。


「…確か、それでいて、人間が入れないのですよね?」

「えぇ。アスティアノと同程度に魔力が充満しているとのことで…。基本的に魔力適性のない人間はおろか、ある程度耐性がある人間であっても、長時間はもたなかったそうです」


 イアノの説明で、デメナはこめかみを抑える。

 しかし、ふと別の疑問も湧いてきた。


「…それほどの魔力濃度で、ラウラさんご自身は無事なんですか?」


 耐性がある程度ある人間でもキツイのなら、ラウラでも耐えきれないはず。デメナの中で、そこが引っかかった。


 しかし、イアノはそれにも淡々と答えた。


「妹と眷族契約を結んでいる関係で、ラウラさんの肉体に妹の魔力が流れ込んでいるらしく、悪魔並みに馴染めてるそうですよ」

「そう、ですか」


 そこまでは知らなかった。

 眷族契約を結ぶことで、魔力だけではなく、契約主の肉体にも影響を及ぼせるのか。


 詳しく聞きたいところではあるが、今の本題はそこではない。デメナは余計な思想を、頭から消した。


「アスティアノからベリアスへ、といった内容であれば、魔界内ですので…。私もゴエティフス家の悪魔ですから、家で築いた人脈を使って対応させていただくところですわ。ただ…」


 イアノはそう言うと、目を伏せた。

 続く言葉は予想がついたが、デメナは敢えて何も言わず、イアノの次の言葉を待った。


 少しすると、イアノはデメナに視線を合わせてきた。


「私的なこととはいえ、今回のことは異世界に跨ぐお話。私一人で勝手に悪魔を派遣していいわけがありませんわ。紹介する者のメドも立っておりませんが、それよりも、そもそも魔界から人間界に悪魔を派遣することは可能なのか、それを確認したかったのです」


 イアノはそこまで一気に言い切った。


 やはり、デメナの予想通りではあった。イアノは、別の世界に悪魔を送ることの是非を、こちらに確認しようとしていたようだ。それ自体は、極めて正しい。


 だが、判断が難しい。デメナは返答に詰まり、少し考え込むように、顎に手を当てた。

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