10年間の変革
ペルセはダスノム工業都市前駅のホームに降り立ち、辺りを見回した。
工業都市、というだけあり、骨組みがところどころむき出しになった、少し無骨さがある印象のホームだ。
駅構内には、スーツを着た悪魔達が慌ただしく動いている姿も見える。この場所に、あんなキッチリした格好の悪魔が少なくない数来るなど、ペルセの知るダスノムではまず有り得ないことだった。
ペルセは駅構内を観察しながら、ゆっくりとホームを歩く。
慌ただしく動くスーツ姿の悪魔たち、そして駅の外から聞こえる、大きな機械の駆動音。視覚と聴覚が、かつてのダスノムを否定してきている。
「…あ、ここか」
前を見ずに歩いていたら、ペルセは改札に阻まれた。慌てて、財布の中に入れていた切符を取り出し、切符を投入すると、改札の扉が開いた。
ペルセはそのまま歩いていき、駅の外へと躍り出た。
ーーーその光景に、ペルセは衝撃を受けた。
「ほわぁ…!?」
かつての、ペルセが住んでいた頃のダスノムといえば、そこら中にゴミの山が高々と積み上がっており、足の踏み場もないほどに地面もゴミで埋まっていたものだ。
だが、今目の前にある光景は、ゴミなど一つもない中で、大きな施設が複数、点在している光景だった。施設の中から機械の動く大きな音が響き、施設の煙突からはもうもうと煙が上がっている。
しかも、風に乗って常に漂っていた、食べ物が腐ったかのような不快な匂いもない。その代わりに、特有の金属の匂いや、ガスの匂い、油の匂いなどが鼻に入る。
「…本当に…ここまで、変わったんだ…」
ペルセの口から、感嘆の声が漏れる。
元々、ダスノムが工業都市になった、と噂程度には聞いていた。だが、実際に目の当たりにしてみると、予想外だった。
自分の中にある記憶が、視覚、聴覚、そして嗅覚まで使って、更新されていく。
工場の中を作業着姿の悪魔達が駆け回っていたり、スーツ姿の悪魔が工場の作業員と話している様子も見えた。作業員が、大きな声で指示を飛ばしているのも聞こえてくる。
ーーーいけない。圧倒されてる場合ではない。
ペルセはハッと我に返ると、駅前にある案内板の方へと向かう。そこには、駅周辺に何があるのか、どう行けばよいのかが記されていた。
ただし、ほとんど工場施設の配置や構造、そしてその周辺にある商店街に関する説明がメインであった。
「…あった。載ってるものなんだね〜…」
ペルセはそこで、目的の場所を確認できた。正直、載っているとは思っていなかったので、どこかで通行人を捕まえて、場所を尋ねようと思っていたのに。
目的の場所は、ここからそう遠くはない。ペルセは、道を真っ直ぐに歩き出す。
道は舗装されており、非常に歩きやすい。ゴミに引っかかって、コケる心配もなかった。
駅から真っ直ぐに歩き、少しするとT字路がある。工場施設に向かうためには、このまま真っ直ぐに進むところだが、ペルセはそこを曲がった。
そこから少し歩きーーーついにペルセは、目的地へと到着できた。




