愛されてる子供
ペルセは目的地に向かい、アスティアノの町中を歩いている。
町のあちこちにある、魔力で点灯しているランタン。
その明かりのもとで、魔導具や日用品を売ってる店。
それらの店を出入りし、悪魔達が会話しながら、道を行き交う。
昔から新鮮で興奮していた。だが、もうすっかり見慣れた光景だ。
「あれ、ペルセちゃん?今日は一人?」
名前を呼ばれて、ペルセは振り返る。そこには、白い鉢巻きを巻いた、ちょっと暑苦しそうな精肉店のおじさんがいた。このおじさんは、ペルセのことを何かと気にかけていて、たまに飴玉もくれるいいおじさんだ。
いつもはハイーラたちと一緒だから、一人でいる姿が珍しいのかもしれない。
「うん、そうなの。ちょっと出かけたいところがあって」
「そうか。まぁ気を付けろよ」
おじさんはそれだけ声をかけると、店の奥へと引っ込んでしまった。忙しいのだろうか。
まぁ、気にしても仕方がない。ペルセはそう切り替え、歩みを進めていった。
数分歩いていると、目的地が見えてくる。
大きくて目立つ建物なので、遠くからでもすぐに分かる。
「あれが噂の…」
ペルセは目的地の建物をしばらく眺めている。
この数年でできた、大きな施設だと聞いている。だが、ペルセもそこへ行くのは初めてだった。
「あら、ペルセちゃん?」
すると、再び声をかけられる。今度は、女性の声だ。
声のした方へ視線を向けると、魔道具や雑貨品の販売店のおばさんがいた。このおばさんも、近い年頃の息子がいるらしく、故に何かとお節介を焼いてくるいい悪魔だ。
「一人でお出かけなの?えらいわねぇ〜」
「そう?」
おばさんは感心したようにペルセを見つめている。
何だか、褒められてるような気がして、嬉しくなった。自然と、ほおが緩む。
すると、おばさんはため息をついた。
「あなたはこんなにもいい子なのに…ウチの息子ときたら…」
「あ、あはは…私、もう行くね」
「あらそう?」
「また今度!」
おばさんの、息子への愚痴が始まろうとしている。こうなると、かなり長時間愚痴を聞かされるハメになる。
普段はハイーラが愚痴の聞き役になってくれるが、今回はそれができない。ペルセは早々に、おばさんの元を離れ、目的地に向かうことにした。
おばさんは少し残念そうにしていたが、こればかりは仕方ない。
ーーー思えば、こんな風に地域の皆から声をかけてもらえることなど、全く想像もしていなかった。
そう思うと、ペルセの頬が自然と緩んでいた。
その後も、時折店の人や近所の顔見知りからも声をかけられつつ、ペルセは目的地へと歩みを進めていった。




