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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
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家族団欒の宴

「全く…」


 デメナは軽く、ため息をついた。

 アレで、クロニオスを呼んできたつもりだったのか。戦闘面以外の知能が然程高くないサブリナなりの、あまりに露骨すぎる誘導だった。


「お父さん!乾杯!!」

「…乾杯」


 だが、クロニオスとペルセが、仲良く互いのグラスを軽く当ててるのを見ると、そんなのはどうでもよくなった。


 ペルセは満面の笑みだし、クロニオスの表情も幾分か柔らかい。


「ク、クロニオス様…」

「お飲み物、持ってきましょうか〜…?」


 そんな状況で、ハイーラとマールがおずおずと申し出てくる。

 クロニオスのグラスの中が半分ほどしか残っていないからか、気を利かせようとしているのだろう。


「ここは宴会の場ですから、気遣い無用ですよ。お気持ちだけ受け取ります」


 そんな二人を、デメナは制した。


 二人の気持ちも理解はできる。だが、今は無礼講の場だ。立場など、あまり重要ではない。


「おいデメナ」


 クロニオスにそう呼ばれ、デメナは振り返った。

 眼前には、丸焼きの一部が切り分けられて乗せられている三枚の皿があった。


「そいつらをこっちに呼べ」

「皆でこれ食べようよー!!」


 無愛想な父と、無邪気な娘。

 表に出てきてる感情は、対照的だ。


 だが、デメナには見えていた。二人とも、根底にある感情は一緒である。


 ーーー家族皆で、食べよう。


 ただ、それだけだった。


「…行きましょうか、お二人とも」

「えっ…?い、いいんですか…?」

「もちろん」


 デメナはハイーラ達に優しく声をかけた。ハイーラ達は戸惑っているようだが、デメナには気にもならなかった。


 血の繋がりなんて、関係ない。

 この場にいる皆が、ペルセの家族なのだ。


「お母さんもマールさんもハイーラさんも!!皆で食べよ!!」


 ペルセが腕を必死に振って、三人を呼んでいる。それを見て、ハイーラ達もさすがに観念したようだ。


「…行こうか〜、ハイーラ〜」

「そう、ね…」


 二人の表情は、優しいものだった。


 やはり、この二人は自分とは違っていても、ペルセの保護者だ。そう、確信させるだけの、優しい雰囲気だ。


「むぐむぐ…美味しいよ!お父さん!!」

「おいおい、慌てて食うな。飯は逃げねぇんだからよ」


 幸せそうにお肉を頬張るペルセを、クロニオスが頭を優しく撫でながら諭している。

 その隣で、クロニオスは大きな肉の塊を一口で食べていた。相変わらず、豪快な食べっぷりだ。


「ペルセちゃん、落ち着きなさいよ…」

「やっぱり、まだまだ子供だね〜」

「ハイーラさん!マールさん!一緒に食べよ!!」


 ペルセの近くに、ハイーラとマールが腰掛けた。

 大好きな保護者達に囲まれて、ペルセは心底嬉しそうだ。


 ーーーあぁ、良かった。

 ダスノム生まれというだけで、残酷な現実を見せられてきた娘が。リドンのせいで、酷い目に遭わされた娘が。


 今は、こんなに幸せそうに笑えている。

 デメナにとっては、母として、幹部悪魔として、こんなに嬉しいことはなかった。

 その目尻には、一滴の涙すら浮かんでいた。


「お母さんも早くぅ!!」


 愛しい娘から呼ばれる。

 夫であるクロニオスは、声こそかけてこないが、さっさと来い、とでも言わんばかりにこちらを見てくる。


「はいはい、今行きますよ」


 デメナはそう言いながら、ペルセの元へと移動した。


 そんな宴は一晩中、続くのだったーーー。

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