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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
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下手な気遣い

 あまりの勢いに、ペルセもデメナも、ハイーラもマールも動きを止めた。周りを見ても、その場にいた者、全員が困惑しているようだ。


 目の前の鶏の丸焼きは出来立てのようで、触らずとも熱気が伝わってくる。肉の焼ける、いい匂いも漂ってきた。


 皆が呆然とする中、鶏の丸焼きを持ってきたと思われる主の声が聞こえてきた。


「貴様がクロニオスの娘か!今回は大変じゃったろう、腹いっぱい食え!!」

「え、えーっと…」


 そこにいたのは、先程クロニオスに絡んでいた悪魔、サブリナだった。その表情は、まるで子供のように無邪気な笑顔だった。


 しかし、ペルセは戸惑いを隠せなかった。


 こんな量、自分ではとても食べ切れない。しかし、無下にするのも悪い気がする。というか、そもそも自分とは初対面なのに、この遠慮のなさは何なのだろうか。

 そう思っていると、横でデメナが大きくため息をついていた。


「サブリナさん…もう少し、穏やかに絡めませんかね…?」

「ワシにそのようなものを期待するのか?」

「…せめて自己紹介をしてください。今のままでは、ペルセさんからしたらただの不審者ですよ」

「それもそうか」


 デメナが呆れたようにサブリナを諭している。しかし、本人の様子や伝わる感情からすると、諦めも混ざってるように見える。


 しかし、サブリナは意外にも素直に、ペルセに向き直った。


「ワシはサブリナじゃ!ダスノムから、よう生きて戻ってきたな、クロニオスの娘よ!」

「わわっ…」


 サブリナはそう言うと、高らかに笑いながら、ペルセの頭を乱雑に撫でてくる。髪がグシャグシャになってしまうが、止めることはできなかった。


 ーーー豪快な性格だ。

 こんなタイプは、見たことがない。


 そんな事を考えながら、ペルセがサブリナの方を見つめると、サブリナはそれに気づいたようだ。


「そう畏まるな!堅苦しいのは嫌いなのじゃ!!」


 サブリナはそう言いながら、再び笑い始める。


 だが、その背後で、ハイーラ達がまたひそひそ話をしている。


「サブリナ様って…あの…!?」

「みたいだね〜。戦好きで有名な〜…」


 全てを聞き取ることはできなかったが、ハイーラ達も知ってはいるようだ。

 何だか、物騒な話が聞こえてくる。


「…とりあえず、この丸焼きは回収してくれませんかね」

「何!?なぜじゃ!?」

「クロニオスさんならいざ知らず、このサイズを私達では食べ切れませんよ」


 サブリナはデメナから諭され、黙りこくってしまう。


 確かに、持ってきてくれた丸焼きは、自分一人は愚か、今この場にいる全員で食べても、半分も減らせる気がしない。


 それでも、サブリナは少し不満そうだった。その様子を見て、デメナがさらに口を開いた。


「お気持ちだけ受け取りますので…」

「おい、何してんだサブリナ」


 デメナがそう言いかけると、その背後にクロニオスが現れた。その手には、大きなグラスが握られており、すでに中身が半分ほどなくなっている。


「おぉ、クロニオス!」

「ったく…丸焼きがねぇと思ったら、余分に持ち去りやがって…そこ退け、バカ」

「ぬぉっ!?」


 クロニオスはまるで猫でもつまみ出すかのように、サブリナをその場から退かした。

 サブリナも、文句を言いたげにクロニオスを見つめていたが、退かされることには然程抵抗していなかった。


「ったく…親子水入らずか?ならば、ワシは退散するとしようか」

「うるさい。とっとと行け」


 サブリナが笑いながら退散する様子を、ペルセとハイーラとマールは呆然と見守っていた。


 ーーーサブリナのことは、よくわからない。

 でも、悪い悪魔ではないことだけは、ペルセにも分かった。


「…ったく…らしくねぇ」


 クロニオスはそう言いながら、デメナの隣に椅子を持ってきて、そこに腰かけた。

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