宴の始まり
皆の目が、玉座に座るサトゥニアの方へと向けられた。先程騒いでいたサブリナでさえ、静かにサトゥニアを見ている。
「待たせて済まなかった。この会食は、イアノがどうしても、ということで、ゴエティフス家総出で企画してくれたものだ。イアノ、なにか一言あるか?」
サトゥニアは座ったままそれだけ言うと、口をつぐむ。その隣に、イアノがいつの間にか立っている。
イアノは辺りを見回しながら、静かに発言を始めた。
「…今回の反乱…首謀者は、ゴエティフス家の幹部だった者ですわ。ならば、ここにいる皆様に迷惑をかけた詫びを、私達が行うのが、筋というものですわ」
イアノはそこまで言い切ると、しかめていた表情を一気に緩めた。一息つき、再び口を開いた。
「…と、まぁそれは建前ですわ。ゴエティフス家専属シェフが存分に腕を振るった、自慢の逸品。存分にお楽しみくださいませ」
イアノはそう言うと、飲み物の入ったグラスを持ち上げた。
一体、何なのか。周りを見ると、デメナとマールがグラスを持っている。
「ペルセちゃん!グラス、グラス!とりあえずそれ持ち上げて!」
ハイーラが横から声をかけてきた。
わけも分からず、ペルセは素直に、近くにあったジュース入りのグラスを持ち上げた。
「それでは皆様、乾杯ですわ!」
「かんぱーーーい!!」
イアノは高々とグラスを掲げた。その掛け声とともに、周りの悪魔達がそれぞれ声を張り上げた。
だが、ペルセには分からない。
周りの悪魔達が、お互いのグラスを軽くぶつけ合ってるように見える。
ペルセがオロオロしながらその光景を見ていると、マールが近寄ってきた。
「ペルセ〜、お疲れ様〜」
「マールさん…あの、これって…?」
マールはペルセの戸惑いに気付いていないかのように、ペルセのグラスに自身のグラスを当ててきた。
すると、ハイーラもマールのグラスに、自身のグラスを軽く当てた。
「これは…乾杯ね。まぁ…ここから宴の始まりだー、っていう宣言のようなものよ」
「宴…」
ハイーラの言葉を受け、辺りを見回すと、確かに席に座る悪魔達が各々、好きに飲み食いしてる様子が目に入る。
サトゥニアは上品に肉を切り分け、一口で大きな肉の欠片を食べ切っていた。
サブリナは素手で肉を掴み、直接齧り付いて頬張っている。
その隣で、アモディエナが少しずつ、出された飲み物を飲んでいた。
ーーー皆、それぞれのやり方で、机のうえに並んでいる食料を堪能しているようだった。
「ペルセさん」
そう声をかけられて振り返ると、そこにはグラスを両手で持ったデメナの姿があった。
「お母さん…」
「乾杯、ですよ」
「あ、うん…」
ペルセは戸惑いつつ、デメナのグラスに自分のグラスを当てた。
デメナはそれを見て嬉しそうに微笑むと、グラスの中を少し口に含んだ。ペルセもそれに釣られるように、グラスの中のジュースを口に運んだ。
「…美味しい」
完全に無意識だった。
思わず、そんな言葉が漏れ出るほどに。
ーーー甘くて、とても美味しい。
今まで飲んできたジュースとは、また違ったおいしさだった。
「ふふっ…よかったですね、ペルセさん」
デメナがペルセの頭を優しく撫でる。
その直後、ペルセの眼前に、大きな鶏の丸焼きが勢いよく置かれた。




