ゴエティフス家の詫び
翌日。
玉座の間で、魔王サトゥニアの号令のもと、魔界を統べる幹部悪魔が勢揃いしていた。
机の上には、誰が見ても分かるほどに豪勢な食事が用意されている。しかも、机を埋め尽くすほどに大量だ。
「…どういう、状況…?」
玉座の間に呼ばれて来たハイーラ達は、目の前の光景を見て唖然としている。
ペルセやマールも状況が掴めず、ハイーラのその質問に答えることができなかった。
その間も、玉座の間をシェフらしき悪魔達が盛んに行き来し、どんどんと食事や飲み物が用意されていく。
「…来ましたわね」
そんな三人のもとに、イアノが近寄ってきた。
イアノはその場でしゃがみ、ペルセの頭に優しく手をおいた。
「イアノお姉ちゃん…」
「ペルセちゃん。よく寝れましたか?」
「うん…。けど、これって…」
ペルセは再度、辺りを見回した。自分の顔よりも大きな肉の塊、明らかに高い物だと分かる果物の盛り合わせ、そして自分の好みに合わせて仕組まれたかのような、甘い香りの漂うジュース。
今までも、鍛錬後にサトゥニアで食事をしたことはあった。だが、こんなに派手なことはなかった。
「…今回の件は、私の所属するゴエティフス家の幹部が起こした反乱ですの」
「反乱…?」
イアノはせわしなく動き回るシェフ達を眺めながら、静かに口を開いた。
反乱。
もしや、父や母への不満があったのだろうか。考えてみても、ペルセにはよく分からない。
「だから、今回お詫びも兼ねて、会食を行うことにしましたのよ。私のいるゴエティフス家の専属シェフを、フル動員しておりますわ」
「ゴエティフス家の、専属…!?」
ペルセの背後で、ハイーラが今にも倒れそうな浅い呼吸をしている。
イアノはそんなハイーラの様子にも構わず、少し先へと歩き出し、こちらを案内してきた。
「こちらの席へおかけになって、お待ちくださいまし」
少し離れたところにある三つの椅子を後ろに下げ、座るように促してきた。
「イアノお姉ちゃんは一緒に座らないの?」
一足先に椅子へ腰かけながら、ペルセは尋ねた。
椅子が高く、座ると足が地面に届かず、足をプラプラさせた。
「私はまだ準備がございますので。後でいっぱいお話しましょうね」
「…分かった…」
イアノにそう言われてしまっては、ペルセもあまり強くワガママを言うことができず、口をつぐんだ。少し不満ではあったが、ペルセは我慢した。
そんなペルセの隣に、ハイーラとマールが腰かけた。だが、二人は座ってても落ち着かないようで、忙しなく辺りを見回していた。
「…私達、場違いじゃないかしら…?」
「こんな豪勢な会食なんて、生まれて初めてだよ〜…」
「さすが、アスティアノ筆頭名家のゴエティフス家ね…」
ハイーラとマールは、ペルセの隣でヒソヒソ話をしている。
確かに、ペルセにとっても、この雰囲気は落ち着くものではない。だが、大人であるハイーラ達にとっては、子供の自分と比べると違う見え方をしてるのかもしれない。
しばらくの間、机の上に増え続ける食事を見て、三人は呆然としていた。




