見舞の終了
「…お父さん、お母さん、頭を上げて」
静寂に耐えきれなくなり、ペルセはクロニオス達に声をかけた。その声に反応するように、クロニオス達は顔を上げ、ペルセの方を見る。
「私はたしかに、この人達にお世話になってる。でも、さ…」
ペルセはそう言うと、背後で未だ呆然としているハイーラ達の方へ一瞬、視線を向けた。
「同じくらい、お父さんとお母さんにも、支えられてるよ。私からしたら、そっちにもお礼言いたいくらいだよ」
「ペルセ…さん…」
ペルセとしては、本心を伝えただけだった。しかし、デメナはそれを聞いて唖然としている。
クロニオスも一瞬止まったが、すぐに表情が戻った。そして、ペルセの頬に、優しく手を添えてきた。
「…ペルセ…ありがとうな。だが、これは俺達が親として言っておかねばならないことなんだ」
クロニオスはそう言いながら、再びハイーラの方へ視線を向けた。しかし、先程よりも優しい視線のようにも見える。
「…え、あの…その…」
ハイーラは未だにオロオロしている。何と返せばよいか、迷っているのだろうか。
すると、マールがハイーラの背中を軽く叩いた。
「…こちらこそ〜…。むしろ、そんな言葉をいただけて恐縮です〜」
マールはそう言うと、クロニオス達に軽く頭を下げた。マールのほうが、幾分か落ち着いてるようだ。
ハイーラはマールのその様子を見て、冷静さを取り戻したようで、ようやく口を開いた。
「…むしろ今回の一件、私達もペルセちゃんを守りきれませんでした。お詫びさせてください」
「気にするな。むしろ、こっちの判断も少し遅れたんだ。お前らにさせなくてもいい怪我をさせてしまったのは、俺の責任だ」
クロニオスはそう言うと、顔を伏せた。隣にいるデメナも、気まずそうに顔をそらしている。
しかし、クロニオスはすぐに顔を上げた。
「…だからこそ、ちゃんと俺の、幹部としての責務を全うする。首謀者には、相応の報いを与えると約束する」
そう言うクロニオスの顔は、真剣そのものだ。
父が、この魔界のNo.2というのは知っていた。その立場がどれほど重いのかも、アモディエナから教えてもらっていた。
そんな地位にいる父が、幹部としてそう言ったのだ。さすがにその意味が分からないほど、ペルセは子供ではなかった。
ハイーラにもその意図が伝わったようで、同じように真剣な顔つきとなっていた。
「…お願いします」
ハイーラはそう言って、マールと共に頭を下げた。
再び、静寂が訪れる。しかし、今度の静寂は、椅子を引く音とともに、すぐに破られた。
「デメナ、戻るぞ」
「もう、ですか?」
ベッドの隣で、クロニオスが立ち上がった。デメナは不満げに、クロニオスに言い返した。
だが、クロニオスはデメナの腕を掴み、半ば強引に立ち上がらせた。
「幹部二人が長時間空けてるのもまずい。サブリナはいても役に立たねぇから、アモディエナの胃が死ぬぞ」
「…それも、そうですね」
クロニオスに諭され、デメナは渋々立ち上がった。その際に、そっとその手が、ペルセの髪を撫でた。
ーーー今までにない、暖かさだった。
「…失礼する」
「では、また。今日は失礼しました。ごゆっくり、お休みください」
クロニオスは一言だけ言うと、そのままスタスタと部屋の外へ出てしまった。
デメナはこちらを見て寂しそうな笑顔を浮かべていたが、クロニオスの後を追うように、部屋の外へと出た。
医務室に、再び静寂が訪れた。




