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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一章:中位の町・べリアス
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暗闇に見えた一筋の光ー差別なき悪魔ー

 マールの一言は、よく意味が分からなかった。


 悪魔なら誰もが持ってる、と言っていたが、ダスノムにいた者達は、オーレン含めて、誰一人としてその話をしてくれたことはなかったし、そんな力を持ってるとも言ってなかった。


「…私も、周りも、そんなの持ってなかった、よ…?」

「ん〜…そういう世界も、あるものかもね〜…」


 マールは再び、手を動かし始めた。髪の間を指で梳かれるのが、不思議と心地よい。

 しかし、マールの声色は、少し戸惑っているようだった。

 魔力がある、というのが普通なのだろうか。ダスノムでは、そんなもの話題にあがったことすらない。


「キミさ〜、生まれはどこなの〜?」

「ふぇ…?」

「私、逆に魔力がない世界ってのを、聞いたことがなくてね〜」


 マールは心底不思議そうな声色で尋ねてきた。

 自分の言ったことは、そんなにおかしなことなのか。

 いやそれ以前に、自分の生まれを、ここで言って良いのか。


 ーーーまた、あの店の時の繰り返しに、ならないだろうか。素直に答えたら、また、酷い目に合わされるのではないのかーーー


「…まぁ、言いにくいなら、無理に聞き出す気はないよ〜」


 ペルセが葛藤していると、マールは手を止めること無く言葉を発した。…自分の顔を見てないだろうに、困惑を見透かされているような気がした。


「ただね〜…」


 マールは動かしていた手を再度止めた。さらに、なにか言いたげに言葉を紡ごうとしている。ペルセの背後で、小さく唸っているような声をあげていた。


 一体、何を言うつもりなのか。


「…私も〜、正直、ここの悪魔達に疎まれてる、っていうか〜…半ば拒否、されてる側、だからね〜。キミが言いにくい理由も、なんとな〜く分かるんだよね〜」


 ーーー相手は、自分の言ってる内容を、分かっているのか。

 拒否されてる?町の悪魔達に?それを、こんな軽口のごとく扱えるものなのか。

 ペルセには、それを理解することができなかった。しかし同時に、何となくではあるが、親近感がわいた。


「あの…えと…」

「ん〜?」


 あの店のときとは違う。店では、大人の店員が目の前にいて、自分の目を見つめて、早く答えろと言わんばかりに質問してきていた。

 今は、その時と比べて、全く焦らせてこない。マールは手を動かさず、のんびりした調子で、背後で待っている。

 だから、言えた。


「…ダス、ノム…」

「…ん〜?ダスノム?」

「…うん…」


 再度の静寂。マールは、手を止めたまま黙りこくっている。

 店の時は、この一言で雰囲気が冷たくなった。…マールでも、そうなのか。


「…なるほど〜」


 しかし、背後から聞こえてきたマールの声の温度は、先程と全く変わっていない。手は止まったままだが、特にまとう空気も変わらなかった。


「あそこに住んでる悪魔がいる、ってのは聞いたことがあるけど〜…本当だったんだね〜」

「…あの…何も、しないの…?」

「…………へ?」


 あまりに態度が変わらないマールに、ペルセは恐る恐る尋ねた。店と同じだったら、ダスノムの名前を出した途端、自分の意志など関係なく、話が進められてしまったからだ。

 質問を受けたマールは、思わず間の抜けた声を出した。一瞬固まったようだが、すぐに手に力を込めてきた。


「きゃうっ…」

「そこの生まれだってんなら〜…余計に、キレイにしてやんなきゃいけないじゃ〜ん」


 …何か別のスイッチを入れてしまったのか。マールが頭皮を擦る力が、強くなったような気がする。


…このあと、キレイにするというマールの口車に乗せられ、長時間洗われ続けることとなったーーー。

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