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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
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クロニオスの歴史

 ハイーラは何と言ったのか。

 偉大な悪魔と言ったのか。自分の父親を。


 それ以前に、ペルセには分からない言葉があった。


「お母さん」

「何ですか?」


 デメナは肩を震わせて、笑いをこらえてるように見える。そんな母に、ペルセは声をかけた。


「きょうかしょ、ってなに?」


 ペルセがその発言をした瞬間、空気が変わった。

 背後で、ハイーラが姿勢を大きく崩している。一方のデメナは、肩の震えを止めた。


「デメナ、お前コイツに勉強はさせてねぇのか?」

「…アモディエナさんがさせてるはずですが…」


 両親が何だかひそひそ話をしている。そんなに変なことを聞いたのだろうか。

 すると、ハイーラが後ろでため息をついた。


「ペルセちゃん…教科書ってのは、学校とかで使われる、勉強用の本のことよ」


 ハイーラが呆れたような様子で教えてくれる。

 そういえば、鍛錬ついでに、アモディエナがちょっとした計算や言葉なんかを教えてくれていた記憶はある。


 しかし、そこに『れきし』なんてものはなかった。


「れきし…って…?」


 だから、ペルセは再び首を傾げるしかなかった。それを見て、クロニオスが考え込んでいる。


「…まぁ、歴史は日常生活でそんなに使わねぇからな、アモディエナも優先度を下げてるんだろうよ…」

「言葉とか、ちょっとした処理能力の方が、生きていくうえで大切ですしね…」


 両親はそう言いながら、何だか二人で納得しているようだ。よく分からないが、二人がいいと言うのなら、それでいいのだろう。


 すると、終始置いてきぼりにされていたマールが口を開いた。


「…結局〜…クロニオスさんって、教科書にも載ってるような方なの〜?」

「あっ…ペルセちゃんにペース乱されて、本題忘れてたけど…。そうなのよ、マール…」


 マールがハイーラを現実に引き戻したようだ。

 しかし、きょうかしょ、というものを理解しても、やっぱりハイーラが言ってることの意味が分からない。


 父が、勉強に使われてるというのか。それが、なんだかピンときていない。

 しかし、ハイーラはマールの肩を強く掴んだ。


「クロニオス様といえば…!今、この魔界を統治されてるサトゥニア8世様と唯一、総合的に互角だった悪魔なのよ…!!力も、魔力も、そして政務能力も…!」


 ハイーラはそう言いつつ、クロニオスを横目で見ている。先程よりもいくらか冷静にはなってるようだが、それでも焦りは隠せていなかった。


「…何だ、今の教育はそんなことまで教えてんのか…?」

「時が経つのは早いですね〜」


 クロニオスのあきれたような反応に、デメナは楽しそうに笑うだけだった。


 ハイーラの言ってる中身はよく分からない。でも、クロニオスがすごいことだけは理解できた。


「もしこの方に、上に立つ野心があったら、なんて議論がなされるほどに、有力な方なのよ!?マール!!」

「そ、そうなの〜…?」

「そんな方が、目の前にいるのよ…!?気づかなかったの…!?」


 ハイーラの鬼気迫る様子に、マールも戸惑っている。


 ペルセは改めて父を見る。確かに、強そうな見た目ではある。また時折、魔王であるサトゥニアと普通に話してることもあった。

 でも、それは魔王というより、長年の友人として話してるような、そんな印象があった。


 だから、ハイーラの言うようなすごい肩書があったとしても、ペルセには無関係だった。


「…お父さん、サトゥニアさんと何かやってたの?」

「別に」


 当人であるクロニオスに聞くも、まともな返事は返ってこない。しかし、その隣デメナが吹き出した。


「クロニオスさん、一般悪魔の間では、アナタが思ってる以上に名が知られてるんですよ」

「何だってんだ…。アイツのほうが魔王に適してるから、俺はアイツを魔王に推したってだけだろうが」

「端から見たら、そう写らないものですよ」


 デメナが笑いながら、クロニオスを諭している。

 その眼前ではハイーラがマール相手に、クロニオスのことについて説明し続けている。しかし、その光景を見ても、クロニオスは首をひねるばかりだった。

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