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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
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親バカクロニオス

「あら…思ったよりもお早い到着でしたね」


 デメナは立ち上がると、躊躇なく扉の前へと向う。


 ペルセが横にいるハイーラ達に背を向けると、先ほどデメナが来た時以上に、緊張を隠せていない。不自然なほどに背筋が伸びているし、冷や汗もかいている。


 ーーー優しい父なのだから、そんなに怯えなくてもいいのに。ペルセは内心、少し不満だった。


「デメナ。いるんだろ。開けるぞ」

「こちらから開けますので、少々お待ちを。ここにいるのは、私だけではないんですよ」


 父・クロニオスの低い声が響く。普通に話してるだけなのに、医務室の空気がビリビリと震えてる気がする。相変わらずの低音だ。

 それを受け、ハイーラ達の体が、余計に固まった。


 デメナが扉を開けると、その先には父親であるクロニオスがいた。ただし、大きすぎて、屈まないと医務室に入れないようだった。


「随分と早かったですね。事後処理が一段落ついたので?」

「いいや…。だが、サトゥニアの野郎が、『自分がいりゃ回るから、とっとと行け』とかぬかしやがって、半ば追い出されたんだ。あの野郎…」


 デメナの問いに、クロニオスはやや不満そうに答える。その不機嫌さが伝わったからか、ハイーラとマールは身を寄せ合っている。


 デメナはクロニオスを、ペルセの元へと案内する。


 父まで来てくれた。それが、たまらなく嬉しい。自然と、ペルセの口角も上がっていた。


「お父さん!!」

「…ペルセ?」


 呼び掛けると、クロニオスの表情が一変する。不機嫌そうな顔だったのが、少しだけ優しい笑顔になった。


「…目を覚ましたんだな、ペルセ」


 クロニオスはペルセの横に座り、その頭を撫でてきた。クロニオスの隣に、デメナも腰掛けた。


 いつも通りの、大きな手。ゴツゴツしていて、自分の頭を掴めそうなほどに大きい手。そんな父の手に撫でられるのも、大好きだった。


「話は聞いた。俺からも色々と言いたいことはあるが…」


 クロニオスはそこまで言うと、隣に座るデメナへ視線だけ向けた。デメナは優しく微笑みながら、クロニオスを見つめ返すだけだった。


「…よく頑張ったな、ペルセ。さすが、俺の娘だ」

「や〜、お父さん…恥ずかしいよっ」


 クロニオスはそう言いながら、ペルセに頬擦りをする。その表情は、緩みきっている。

 ペルセも、口では嫌がったが、内心とても嬉しかった。不器用な父がここまでしてくれることは、滅多にない。


「あらあら。仲良しですねぇ」

「…どうせお前も、抱擁くらいしてんだろ?このくらいやらねえと、父親の立つ瀬がねぇよ」


 デメナは楽しそうに笑いながら、クロニオスをからかった。しかし、クロニオスはそのからかいを正面から打ち返してみせた。


 ーーー以前なら、クロニオスはペルセにとって少し怖かったし、デメナにからかわれたら動揺していた。だが、今ではすっかり、自分にとっては優しい父親だ。


 これが、親バカというものなのか。


「…っと…ペルセばかりにかまけてもいられねぇな」


 クロニオスはそう言うと、向かい側に座るハイーラとマールへ視線を向けた。


 二人は、呆然とした様子で、クロニオス達を見つめていた。何か、おかしなことでもあったのだろうか。


 しかし、少し考えたら、ペルセでも分かった。

 クロニオスようなゴツい男が、自分のような子供に頬擦りをするなんて、なかなか見られる光景ではない。


 ーーー驚くのも、無理はないかもしれない。


「そういえば、この方の紹介がまだでしたね」


 デメナもクロニオス同様、ハイーラ達へ視線を向けた。

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