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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
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母への報告

 三人の視線が、扉に向く。

 その向こうにある気配を、ペルセは敏感に感じ取った。


「デメナです。入っても大丈夫ですか?」


 その声に、ハイーラ達の背筋が伸びる。同時に、ペルセは満面の笑みを浮かべた。


 母が来た。夢ではなく、現実で会える。


「ど、どうぞ…!」


 ハイーラがどもりながらも、扉の向こうにいるデメナに返事をする。

 その直後、医務室の扉がゆっくりと開いた。


「お母さん!!」


 扉の向こうにデメナの姿が見えた瞬間、ペルセは歓喜の声をあげた。それを聞いたデメナは、驚いたように目を見開いた。


「…ペルセさん、目を覚まされたんですね」


 デメナはペルセの寝ているベッドに近寄ってきた。


 駆け寄りたい。抱きつきたい。

 しかし、心がそう思っていても、ペルセの疲弊しきった体は、動いてくれなかった。


 デメナが近づくにあたり、ハイーラは向かい側にいるマールの隣へと移動した。


「ちょっとマール!…そっち詰めなさい!」

「え〜…狭い〜…」

「うっさい!母娘の時間なのよ!?」


 ペルセの背後でヒソヒソ話してるつもりのようだが、二人の会話は丸聞こえだった。だが、ペルセにとって、そんなものは気にもならない。


 自分の近くの椅子に、デメナはゆっくりと腰かけた。そして、腕を広げてきた。


「…ペルセさん…よく、頑張りましたね」

「お母さん!!」


 ペルセは勢いよく、母に抱き着いた。デメナも、ペルセの体を受け止め、強く抱き締めた。


 やっぱり、心地良い。マール達の抱擁とは、また違った温かさがある。抱きしめる力が強くて、少し苦しくはあるが、その苦しさが、今の母との時間を現実だと認識させてくれた。


「大変だったでしょう?」

「うん…!私、二人助けるために、イアノお姉ちゃんを手伝いたくて、頑張ったの!!アモディエナさんとの約束も守るために、何とか抑えるのが、大変だったけど…。でも!ちゃんとできたよ!!」


 あの時は、怖かった。吐きそうになるほど、嫌な感情が聞こえてきていた。でも、それでも。傷付けられたハイーラ達を守るため、イアノを助けたくて、頑張ったのだ。


 デメナはその話を、ペルセの頭を優しく撫でながら、笑顔で聞いてくれた。


「えぇ。イアノさんからも聞いていますよ。…大分、力の扱い方も分かってきたようですね」

「ちゃんと鍛錬の成果、出せたよ!!」


 ペルセはデメナの顔をまっすぐに見つめる。

 本音を言えば、デメナにもその成果を見てほしかったくらいだ。


「でも、途中で疲れちゃったんだ…」

「そこは、まだこれからですね。今後の課題としましょうか」

「うん!!」


 シュンとしてしまったペルセを、デメナは全く否定しなかった。

 体力が最後まで持たなかったことだけが、ペルセの中で心残りだった。これからの鍛錬で、体力を身につけよう。ペルセはひそかにそう決心していた。


「そういえば…」


 デメナは抱擁を解きながら、何かを思い出したようだ。ペルセは不思議そうに、首を傾げる。


「この後、お父さんも、来ますよ」

「えっ!?」


 その発言に、ペルセの声と、後ろにいるハイーラの声が重なった。ハイーラは、驚きと若干の恐怖を隠しきれない様子で、少し顔を青くしている。


 そういえばハイーラ達は、母とは画面越しとはいえ話をしたことがあるが、父とは会ったことがなかった。それもあるのかもしれない。


「ハイーラさん大丈夫!お父さん、ちょっと強面だけど、優しいから!!」


 ペルセはハイーラの方に視線を向け、励ました。だが、ハイーラの様子は変わらない。隣に座るマールも、緊張からか、顔が強張ってるように見える。


 そんな空気の中、再び扉がノックされた。

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