ペルセの目覚め
玉座の間から少し離れた、医務室にて。
「んん…」
ベッドで眠る一人の少女、ペルセが目を覚ます。
視界がぼやける。体が凝り固まり、何だか重い。
ペルセはゆっくりと体を起こす。あの時、母が側にいたのは、夢だったのだろうか。
ペルセは辺りを見回す。
すると、ベッドの両隣に、マールとハイーラがそれぞれ座っていた。
「あ〜、ペルセが起きた〜」
「ペルセちゃん…!!」
すると、ハイーラがペルセの体に抱きついてきた。その顔を見ると、鼻の部分にガーゼが張られていた。
ーーーそういえばあの時、ハイーラは鼻から血を流していた。そこは、大丈夫だったのだろうか。
「…ここ、どこ…?」
「サトゥニアの医務室〜。イアノさん達に連れてきてもらったんだよ〜」
抱きついてくるハイーラの頭に手を置きながら、ペルセは辺りを見回す。
マールの話だと、サトゥニアの、いつも鍛錬に来るための場の医務室とのことだ。だが、何回かサトゥニアに来てるペルセでも、ここは初めての場所だった。
「ペルセちゃん…良かった…!」
「…ねぇマールさん…これ、どうしよう?」
ハイーラは強い力でペルセに抱きついたままだ。普段ならいいが、今は体中が凝ってて、ちょっと痛い。
ペルセは助けを求めるようにマールを見つめるが、マールはクスクス笑っているだけだった。
ーーー助ける気は全くなさそうだ。ペルセは、そう悟った。
「でも、本当に心配してたからね〜…私達のために、あんなに暴れた末に力尽きてたし」
「あ〜…」
マールに言われ、ペルセはあの時のことを思い出した。
壮絶な悪意と敵意。初めて味わう感情の濁流に晒され、気分が悪かった。そんな中で、ハイーラとマールを殴られて、怒りが限界突破したのは覚えてる。
そして、その先のこと。二人を守るため、そして周りに被害を及ぼさないために必死だったのは、記憶していた。
「でも、あなたのおかげで、私達は助かったよ〜。ありがとね〜、ペルセ〜」
そう言うと、マールはペルセの頭を撫でる。
何回されても、心地の良い撫で方だ。ペルセの気持ちいいところを見透かされてるように撫でてきている。
「…ちょっとマール!それ私も言いたかったのに!?」
「だってあなた、ずっとペルセにくっついてるじゃ〜ん。お互い様〜」
ハイーラが顔を上げて、マールに苦言を呈する。しかしマールは気にしてないようで、変わらずクスクス笑っていた。
ハイーラの文句と、それを軽く流すマール。
どこに行っても、このやりとりが聞けると何だか帰ってきた実感がわいてくる。
ハイーラはようやく、ペルセの体から離れた。そして、不満げにマールを見つめている。
「…あんた、いつもそのポジションよね。ペルセちゃんを癒やす側の」
「そうかな〜?」
言われてみると、確かにこういう時にペルセを慰めてくれるのは、マールの方が多い気がする。
もちろん、ハイーラにもされることはあるが、マールにされる方が居心地が良い。ハイーラには言えないが。
「…まぁ…もう、今更ね」
「なんなの〜…?」
ハイーラは何かを諦めたように、ため息をついた。マールはそれを見て、不思議そうに首を傾げるだけだった。
すると、医務室のドアがノックされた。誰かが、来たようだ。




