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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
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イアノの報告

 イアノたちは、玉座の間の扉を開いた。相変わらず、その扉は重い。


 扉の先にあったのは、円卓を囲む幹部達、及びアモディエナの部下達が中心となって、書類仕事に追われてる姿だった。その机の上には、書類の山が積み上がっていた。


「私が用事のある相手は、アモディエナ様ですので。それでは」

「…えぇ。ありがとうございました」


 バルディはそれだけ言うと、そのままアモディエナの元へと向かった。

 イアノはバルディを見送り、自分の目的地へと、視線を向けた。魔王である、サトゥニアへ。そのまま、軽やかな足取りで歩いていった。


 サトゥニアも、アモディエナ同様、書類の山に追われている。だが、そこに焦りは感じられない。アモディエナを含めた事務処理部隊が、余程優秀なのだろう。


「…魔王様。お忙しい所、失礼致します」


 イアノが声をかけると、サトゥニアは手を止め、ゆっくりとこちらに顔を向ける。


「お前か。…報告を聞こう」

「その前に、デメナ様とキマエさんもお呼びしてくださいますか?」


 自分一人だけの報告で済ませるつもりはない。同席していたデメナとキマエからも、報告を聞いてもらうべきだ。

 サトゥニアはその意図を察したのか、仕事をしているデメナとキマエを呼び付けた。


 呼ばれたデメナとキマエは、イアノがいることで、用件を察したようだ。


「…思ったよりも早かったですね、イアノさん」

「やはり、お見通しですわね」


 分かっていた。キマエはともかく、デメナには見破られていたであろうことは。だが、それでもデメナは、具体的には言ってこないのが、上司としての気遣いなのだろう。


「さて…リドンと話をした結果は、どうだった?」

「結論から申し上げますと…私をもってしても、説得は不可能でしたわ」


 イアノは苦々しく表情を歪めながら、結論を述べた。サトゥニアはそれに対し、眉をひそめた。


「色々と、お話をしましたの。事実を陳列し、キマエさんから実例も示し、私からの想いもお伝えしましたわ。それでも、リドンさんの思想は、一切変わりませんでした」


 イアノは淡々と報告する。その報告に、感情を入れる必要はない。一方のサトゥニアは、その報告に口を挟まず、静かに聞いているだけだった。


「説得の余地は、無しか…」

「個人の情でワガママを言ったのに、成果を出すことができず、申し訳ありませんでした」


 イアノはそう言うと、深々と頭を下げた。

 あの対話は、本来ならば設けるべきではなかった、非常に危険な行為だ。だが、イアノはそれでも、個人的にリドンと話をしたかった。


 ーーー結果として、決裂がもう元に戻らないことを、確認させられてしまったが。


「気にしなくて良い。…むしろ、よく報告してくれた」


 だからこそ、サトゥニアは穏やかだった。まるで、最初からこうなることを予見していたかのように。


 すると、サトゥニアはデメナ達へと視線を向けた。


「デメナ、キマエ。同席していた貴様らから、何か補足はあるか」


 サトゥニアにそう言われ、デメナは口を開かなかった。代わりに、首を静かに、横に振るだけだった。


「特にございません。マルス家当主として、イアノの報告は、嘘偽りないものであると保証します」


 キマエは厳かな口調で、そう述べた。

 そこまで重苦しくしなくてもよいのだがーーーそこはキマエらしく、武人としての、そして当主としての誇りがあるのだろう。


「…イアノ、報告ご苦労だった。あとは、我々に任せろ」


 サトゥニアはそれだけ言うと、書類の方へ視線を戻す。イアノはそれを見て、サトゥニアの元から引き下がった。

 それにつられるように、デメナとキマエも引き下がろうとした。


「デメナ。お前は少し残れ」


 しかし、サトゥニアはデメナを呼び止めた。


 ーーー一体、何なのだろうか。気にはなるが、イアノはそのままサトゥニアの元を離れ、書類処理の手伝いをしに、アモディエナの元へと向かった。

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