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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
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キマエの横槍

「先程からお前の言ってることを整理すると、一度でもダスノムに行った連中は永久の犯罪者だから、救う必要はない。むしろ、そんな犯罪者集団を我々が救えば、善良な民に害が及ぶ。それで間違いないな?」

「…えぇ。そうです。それが事実ですよ、キマエ卿!」


 キマエは己の理解を淡々と語る。

 イアノは何も言わなかったが、リドンは勝ち誇ったように言い放った。


 すでに勝ったとでも思ってるのだろうか。だとするなら、随分おめでたい頭をしている。本当に、ゴエティフス家の幹部なのか。


 内心呆れつつ、キマエは言葉を続ける。


「あんたの論理だと、ダスノムに一度でも行った者は、二度と這い上がることを許されない。なぜなら、一度ゴミとして廃棄された側だから、となるが…それも、間違いないのか?」

「えぇ。間違いありません。それが、その魔界の常識です!」


 常識、とまで言い切られた。

 確かに、そうなのかもしれない。半端者の貴族の間では、の話だが。


 だが、キマエの確認はまだ続いた。


「…たとえ、その者に一切の非がなかったとしてもか」


 これだけは、確認しておかなければならない。もし、何の罪もない者まで同じ扱いをするのなら、この男は確実にーーー


「そんな者は存在しません。空想での話はやめていただきたい」


 しかし、キマエのほんの少しの希望さえも、潰されてしまった。

 思わず、大きなため息をついてしまった。


「…先程から、何を言いたいのですか?」


 リドンが少し、苛ついてきているようだ。ならば、こちらも早めに結論を言ってしまおう。

 キマエはそう考え、ゆっくり口を開いた。


「大した話ではない。俺の部下にもいるんだ。過去、ダスノムに堕ちていた者がな」


 これは、事実だ。

 マルス家の部隊の中に、確かに存在している。


 ただ、それだけの話をしただけに過ぎない。にも関わらず、目の前にいるリドンは、大きく目を見開いている。


 すると、少し考え込んでいたイアノが、キマエに視線を向けてきた。


「確か、以前私にも紹介してくださいましたわね。あの御三方のことですか?」

「…何だ、覚えていたのか…」

「話題に挙げられて思い出しましたわ。でも、そんなに昔の話でもありませんわよ?」


 イアノとのやりとりを聞いて、リドンは口をあんぐりと開けている。


 キマエはリドンに視線を向け、さらに言葉を紡いだ。


「…聞いた通りだ。ウチの、マルス家の一員に、三人、ダスノムからのし上がってきたヤツがいる。そのことについて、あんたはどう思う?」


 煽りでもない。罵倒でもない。

 純粋に、気になっただけだ。


 しかし、リドンは口をモゴモゴさせるだけで、意味のある言葉を発してこない。


 ーーーまぁ、こうなるだろう。

 概ね、予想通りの反応だ。決定的に、自分と認識と矛盾した実例を突きつけられてるのだから。


 リドンはしばらく唸り、ようやく言葉を紡ぎ始めた。


「…犯罪者共が、実力で這い上がれるわけがない…!何か、陰謀が…!!」

「あ?」


 さすがに、聞き捨てならない言葉が聞こえた。

 キマエの喉から思わず、低くドスのきいた声が出てしまった。


 リドンの肩が大きく震える。

 なぜか、隣にいるイアノも、少し怯えてるように見える。


 しかし、キマエは止まらなかった。


「…お前がどんな考えしてようが勝手だがな。少なくとも、ウチの部下は、俺の下でも厳しい鍛錬も超えてきた、根性のある連中だ。そこに、生まれだとか育ちだとか関係ねぇよ。胆力があるかないか、それだけだ。うちの部下を何も知らねぇお前が、その努力を否定するな」


 思わず、一気に言い切ってしまう。

 かなり、不愉快だった。叫ばなかっただけ、自分を褒めてやりたい。


 部下をこんな形で愚弄されるのは、どうにも我慢ならない。そこは、自分も当主としてまだ未熟な部分だ。


「…長く話しすぎた。俺からの話は、以上だ」


 これ以上やると、主導権がどこにあるか分からなくなってしまう。

 キマエはそれだけ言うと、口を閉ざした。

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