戦果報告
「…そうか。ご苦労だった」
玉座の間で、キマエは魔王サトゥニアの前で跪き、戦果を報告した。
サブリナによる完全制圧、そして総大将であるリドンの捕縛成功も、そして回収した名簿の譲渡も、全て。
本来であれば、現場で徹頭徹尾暴れ続けたサブリナの役目だろう。だが、あの方がこんな堅苦しい業務を好むわけがない。
帰る途中で自分へ役目を早々に押し付け、さっさといなくなってしまった。
ーーー相変わらず自分勝手な方だとは思った。だが、それを言うのも今更だろう。
アモディエナが、先程渡した名簿の中身を眺めている。自分も、中身を詳しくは見ていないが、かなりの数の名前が乗っていたはずだ。
「…これだけの量があれば、調査の手間がかなり省けるな。キマエ、助かった」
「お褒めの言葉、ありがとうございます。私にできることをしたまでです」
アモディエナからの言葉に、キマエは会釈して返す。すると、それに続けるように、サトゥニアの横に座るクロニオスが口を開いた。
「急な依頼だったにも関わらず、娘を助けてくれたこと、あの子の父親として感謝する」
「いえいえ。娘さんが無事で、何よりです」
確かに、急な依頼だった。ゆえに、初動が少し遅れ、ペルセやその保護者達を傷付けてしまった。結果的に大事には至らなかったが、もしクロニオスの判断が遅かったら、どうなっていたか。
ふと、辺りを見回す。もう一人の幹部が、不在であることに気付いた。
「ところで…デメナ様は?」
ペルセの一件で最も怒っていたであろう、母・デメナの姿がない。あの時、応接間で会った後、どこに行ったのだろうか。
「デメナなら、イアノと共に尋問室へ向かった。イアノが同じゴエティフス家の悪魔として、リドンと話し合いをしたいそうでな。その仲介に向かった」
キマエの疑問に、クロニオスが答えた。
ーーーなるほど。確かに、昔からの知り合いで、同じ家の所属である、というイアノの立場なら、リドンと話をしたいのも当然の感情だろう。
だが、先程連れてこられたばかりのリドンが、果たしてまともに話をできるのだろうか。サブリナがいなければまた、強気に出られるのだろうか。
「…クロニオス様。イアノはどちらに?」
念のため、自分も向かったほうがよさそうだ。そう判断し、同席を願い出ることにした。
一瞬、クロニオスは面食らったような表情を浮かべた。しかし、すぐにそれも元通りとなった。
「第一尋問室だ。行くなら好きにしろ」
クロニオスはぶっきらぼうに言い放つ。だが、何となくその言葉尻からは、温かさのようなものが感じ取れた。
キマエは軽く会釈をし、玉座の円卓に背を向ける。
リドンは拘束してあるから、手を上げられることについての心配はしていない。
ただ、関係者である二人だけでは、どうしても感情的になってしまうだろう。忙しい幹部悪魔の手を煩わせないためにも、キマエは第一尋問室へ向かうことにした。




