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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
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反乱軍の絶望

 リドン軍の本陣にも、振動が伝わってきていた。


 その中心にいるリドンは、表面上取り繕えてはいたが、内心大パニックだった。


 プランA、砲撃による不意打ちも、サブリナの手で完全に潰されてしまった。そして、未だプランBに関する報告は上がってこない。


「前衛部隊、全滅しました…!!サブリナが、こちらに向かってきています!!」


 伝令からの報告が上がってくる。

 前衛全滅。万をゆうに越す数を用意していたにも関わらず、それを単騎で壊滅させられた。その事実が、リドンの頭を抱えさせた。


 だが、まだだ。

 連中の大事にしている、ペルセとかいう小娘の身柄を確保できれば、サトゥニアの動きを止めることができる。


 リドンは、希望を捨てていなかった。


「リ、リドン様!!」


 すると、背後から本陣へ慌てたように駆け込んでくる兵士の声が聞こえてくる。プランB、ペルセ誘拐作戦の実行部隊の連中が、帰ってきたようだ。


 リドンは希望を込めてそちらへ視線を向ける。だが、あっという間に希望は打ち砕かれた。


「ど、どうしたお前ら!?」


 プランBの実行部隊には、外傷こそない。しかし、完全に心を折られており、何かに強く怯えているようだった。


 しかも、どこを見渡しても、例の小娘・ペルセの姿はない。


 ーーーまさか。

 嫌でも、最悪の結果を想像する。


 それを知ってか知らずか、プランB実行部隊の一人が、口を開いた。


「き、キマエ卿…キマエ卿が…!!」


 キマエ。その悪魔の名前は、リドンも知っていた。

 武闘派名家の筆頭である、マルス家の当主。


 だが、一体何の関係があるのか。マルス家は、この一件について静観していたはずだ。少なくとも、リドンの認識はそうだった。


「キマエ卿がどうした!?」

「…小娘へ…!小娘への、追っ手を、出すなと…!!」


 ーーーなんということだ。

 キマエの行動が、マルス家全体の意志なのかは分からない。だが、少なくとも、これ以上深追いをしようものなら、確実に武闘派筆頭であるマルス家をも敵に回してしまうことは確実だ。


「ば、ばか、な…!!」


 リドンはその場で悟った。

 プランBも失敗した。しかも、想定していたよりも、遥かに悪い形で。


 ヘナヘナと、力無くその場に崩れ落ちる。しかし、現実は待ってくれなかった。


 地響きの発生源が、かなり近付いてきている。

 地についた掌から、先程よりも大きな振動が伝わってきた。


「リドン様!ご指示を!!このままでは…!!」

「キマエ卿が…オロナが…」


 周りの兵士達が、自分に向けて一気に話しかけてくる。だが、もはや耳には入ってこなかった。


 もはや、勝ち目などあるはずがない。ここからひっくり返せる魔法のような一手があったら、どんなに怪しくても飛びついてしまうだろう。


 すると、外から会話の声が聞こえてきた。


「サブリナ様。マルス家当主キマエ、ただいま馳せ参じました」


 無骨で低い、男の声。その声を聞き、プランB実行部隊の兵士達が、大きく肩を震わせる。


「ひっ…!!」


 もはや、気の毒なほどに怯えている。一体、何を刻まれているのか。

 だが、リドンにとっても、地獄の宣告にしか聞こえなかった。


「何じゃ、結局来たのか」

「前線こそ、私の主戦場ですから。あなたの背中を、お守りします」

「いらぬ。…と言うところじゃが、貴様相手にそんなこと言うてもムダじゃな。好きにせい」


 本陣の外で、何気ない会話が繰り広げられている。もはや、処刑宣告だった。

 サブリナ単騎でも、万単位の軍勢を相手取り、壊滅させられるし、これほど大きな地響きを起こせるのだ。にも関わらず、そこにプランB実行部隊の心をここまでへし折った、マルス家当主の男が合流したのだ。


 もはや、逃げる気も起きなかった。

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