表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
PR
132/133

怒りの怪物、動く

 一方、戦場の最前線は、もはや戦場とは言えない状態となっていた。


 多くの兵士達が、なぎ倒されている。死んでこそいないが、動けないほどの怪我を負わされている。


 甲冑の上から殴り壊され、倒れた兵士達がうめいている。

 その場に立てている兵士達も、武器を構えて隙を伺ってはいるが、すっかり怯えきっている。


「遠慮するでない。ワシが休憩しておるからと言うて、気遣いはいらんぞ?ここは戦場、食うか食われるかのやり取りをする世界じゃからな」


 そんな中、サブリナは瓦礫の上に座り、持ち込んだ魔獣の肉を食べていた。少し暴れたら、小腹が空いたのだ。


 サブリナの体には、無数の擦り傷や切り傷がついているが、大した怪我ではない。


 サブリナの言葉を受けても、誰一人として挑んでこない。楽しくなってしまって、少しやり過ぎただろうか。

 これは、反省点だ。もっと、敵に希望を持たせたままで遊ばなければ、早々につまらなくなってしまう。


「サブリナ。聞こえるか。クロニオスだ」


 そんなことを考えながら肉を貪っていると、頭の中に直接語りかける声が聞こえてきた。


 魔力通話。クロニオスがこんなやり方をしてくることは、なかなか珍しい。余程の緊急事態でも起きたのか。


「なんじゃ。余程強い敵でも出てきおったのか?」

「…戦場で飯食ってんのかお前は…」

「腹が減ったからの」

「はぁ…まぁいい…」


 クロニオスからは呆れられているが、これが自分のやり方なのだ。文句を言われる筋合いなどない。


 ケラケラ笑うサブリナに、クロニオスは厳かな口調で話を始めた。


「…以前お前に共有した、俺の娘の件だ」


 そう言われ、サブリナの笑い声が止まる。

 確か、デメナの部下を通じて、娘の存在が敵に漏れてる可能性があるから、そこを突いてくるかも、という話だった。


 まさかそこまで落ちてはいまい、と思っていたのだが。現実になったとでも言うのか。


「あの小娘に、何かあったのか?」

「何かあったどころじゃねぇ。あり過ぎたんだよ…」


 クロニオスはそう言うと、つい先程デメナから受けたという報告の内容を伝えてきた。

 初めは軽く笑い飛ばそうと思った。だが、内容が進むに連れ、そんな気もなくなってしまった。


「…それは、本当の事か?」

「俺の妻が嘘をつくとでも思ってるのか」


 耳を疑う話だった。しかし、クロニオスやデメナが言うのなら、本当のことなのだろう。


 サブリナは残った肉を一気に口へとかき込んだ。今回の相手は、呑気に遊んでいい相手ではない。そう、確信したからだ。


「サブリナ。今回の敵は、壊滅では足りない。見せしめるのは好みではないが…圧倒的な力で、潰せ」

「…分かっておる」

「ならいい、任せるぞ」


 それだけ言うと、クロニオスからの通話は途絶えた。

 サブリナの拳は、怒りに震えていた。怒りのあまり、握っていた骨付き肉の骨を握りつぶし、バラバラに砕いてしまった。


 殺すつもりはない。だが、もう遊ぶ時間は終わりだ。サブリナは、ゆっくりと立ち上がった。


 そして、怯える兵士達に視線を向ける。今までなら、怯えた兵士達にこちらから攻撃をすることはなかった。

 だが、それはあくまでも、相手が戦士であるという前提のもとでの話だ。その前提が崩れた今、そんな配慮をしてやるつもりもない。


 サブリナはゆっくりと、動き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ