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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
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幹部への共有

 デメナは玉座の間の扉を勢いよく開ける。


 円卓には、サトゥニア、クロニオス、そしてアモディエナが座っていた。視線が、一斉にこちらへと向く。


 机の上には、書類が広げられている。どうやら、アモディエナが戦場の情報共有をしていたようだ。といっても、あのサブリナがいる以上、心配はしなくてよさそうではあるが。


「…その様子だと、あまり良い状態ではなかったようだな」


 ペルセ達を出迎えに行くことは、皆にひと言言ってあった。だからこそ、アモディエナもデメナが肩を怒らせてる様子を見て、そのような軽口を言えたのだろう。


 デメナはそれに応えることなく、円卓の席へと腰を下ろした。


「…それで、ペルセ達の様子はどうだったんだ」


 クロニオスが重々しく尋ねる。言葉は冷静だが、内側にある焦りと心配が、魂からダダ漏れだ。

 無理なのはわかっていたが、やはり一緒に連れて行ったほうが良かったかもしれない。そう思いつつ、デメナは口を開いた。


「結論から申し上げますと、ペルセさんは無事です。外傷も、特にありません。ただ、疲労困憊で、現在医務室で休養させています」


 その言葉に、クロニオスが大きく安堵のため息をついた。サトゥニアやアモディエナも、安心したように頷いている。


「ですが…同居している保護者の、淫魔二名は、顔への殴打痕があり、うち一名は、鼻の骨が折れる重傷です」


 そう言った瞬間、困惑の空気が場を包んだ。

 無理もない。ペルセの保護者であるあの二人は、兵士ではない。すなわち、戦いで怪我をする道理がないのだから。


「…どういうことだ。経緯を詳しく、説明してくれ」

「イアノさんからの伝聞にはなりますが…」


 サトゥニアから続きを促され、先程イアノから受けた報告内容を、ありのまま伝える。


 話をしていくに連れ、次第に場の空気が重くなっていく。ペルセの居場所を土足で踏み荒らし、拘束した非戦闘員に手を上げ、挙句子供に力を振るわせてしまったこと。


 全てが、その場にいる者達の、怒りのツボを刺激している内容だった。


「…そうか…」


 すべてを聞き終えたクロニオスが、静かに、しかし確実に怒気をはらんだ声で呟いた。妻であるデメナでさえ、ここまで怒ったクロニオスを見た記憶はない。


 だが、無理もない。大切な娘を追い込み、さらにはその娘を世話してくれた恩人達も傷付けた。クロニオスにとってみても、自分と同様の感情だろう。


「今まででも、極端な思考をしてる者は時々いたが…これほどの者は…」


 普段冷静で、合理性を重視するアモディエナでさえも、リドン軍の振る舞いに絶句している。


 すると、クロニオスがデメナの方を見つめてきた。


「デメナ。この一件、サブリナにも共有しておく」

「えっ…?」


 前線で暴れるサブリナに共有をするのか。この一件を。

 隠せるものではない。だが、今共有したら、大変なことになるのは目に見えていた。


 サブリナは、会議や細かい事務が嫌いなだけで、バカではない。今回の話も、クロニオスなら分かりやすく伝えてしまうだろう。


 だが、そんなことをしたらーーー


「…あの方、間違いなく怒り狂うのでは…」

「だろうな」

「だろうな、って…」


 クロニオスは平然としている。分かってて伝えるつもりなのか。

 ただでさえ、異常な筋力を有するサブリナが、怒りに任せて暴れれば、もはや戦ですらなくなってしまう。その懸念が、拭えなかった。


「アイツなら、俺の意図を汲み取ってくれるさ。連中に…もう二度と同じ事をしようと思わせないほどの、絶対的な差ってヤツを、刻みこむ」


 クロニオスにそこまで言い切られて、デメナは何も言えなくなってしまう。こうなったら、夫は何を言っても曲げてくれない。それを、知っているからだ。


「それで構わないな?サトゥニア」

「構わん。もはや、相手は戦敵ではない。ただの外道集団だ」


 クロニオスの確認に、サトゥニアも深く頷いた。アモディエナも、止める気はないようだ。


 それを受け、クロニオスはサブリナに魔力通話を繋ぎ始めた。

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