家への招待ー文化の違いー
マールの住処は、町で見た整った建物と比べると、ボロボロだった。
石でできてはいるが、ヒビがあちこちに入っており、その隙間からは、緑色の植物が顔を出している。よくよく見ると、一部欠けている箇所もある。
---なぜ、こんなところで暮らしているのだろうか?
町に行けば、もっと綺麗でよさげな建物がある。それは、先程この町に来たばかりの自分さえも知っている。しかし、マールはそれを気にも留めていないようだった。
「入ってきていいよ~」
マールの軽い調子とは裏腹に、鈍い音を立てて石の扉が開かれる。部屋の中は明かりがついておらず、真っ暗だ。奥がどうなっているのか、全く分からない。
ダスノムでも暗い場所はあったため、そこへの抵抗感はない。しかし、ここは他者の住居。どこに何があるか分からず、あまり動けなかった。
石の空間の冷たい空気が、肌にまとわりつく。少し湿っており、あまり気分のいいものではない。
「ちょっと待っててね~、今明かりを点けるから~」
マールはそういうと、暗闇に向けて指を軽く弾いた。乾いた音が、暗闇の中に響く。
それと同時に、マールの指先から、何かが弾き飛ばされたのが、かすかに見えた。
---そして、次の瞬間に、部屋の明かりが一斉に灯された。
「わぁ…!?」
どうやって明かりを点けたのか。どうしてあれで明かりが点けられるのか。ペルセには、何も分からなかった。
明かりの灯った部屋の中を、ペルセは興味深そうに眺めていた。
外見同様に、中にもひび割れている部分や、一部剥がれ落ちている部分もあった。さらに、中は整頓されておらず、ダスノムほどではないが、見慣れない形のゴミが散乱している。
---ゴミ山ほどではないが、この中を漁ったら、1つくらい何か発見できないか---
そう思いながら、ペルセは落ち着きなくそわそわとしていた。
「…あんまり、人の家の中をじろじろ見るものでもないよ~」
背後から聞こえるその声に、ハッとした。そういえば、ここはみんなと共有しているゴミ山ではなく、個人の持っている場所だった。完全に、それを忘れていた。
「…ごめんなさい。…って、どしたのそれ?」
ペルセはとっさに、マールを見て謝った。と同時に、マールが何か抱えているのに気づいた。
---大きいタオルだ。店のシャワーを借りたときに使ったのと同じくらいの、下手するともっと大きそうだ。
「キミさ~、髪の毛とかぼっさぼさだよ~?」
「え…?」
そう言われて、ペルセは自分の髪を手で触れる。といっても、感じる感触は、いつもと変わらない。
そんな様子を見て、マールは小さくため息をついた。
「…話をする前に、一回身だしなみを整えよっか~」
「みだしなみ…?」
「髪もそうだけど、服もね~。それ、サイズ合ってないよ~?」
「服…?」
服についても、自分で用意したものではなく、店の方で用意されていたものだ。別段、隠れているところが隠れていれば、服などどうでもよかった。
訳が分からず困惑していると、マールはペルセの腕を握ってきた。
「…一応さ~、キミも女の子なんだから~、ちょっと綺麗にしとこうよ~」
「え、へ、は…?」
戸惑うペルセをよそに、マールは部屋の奥へペルセを連れて行った。




