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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
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撤収

 キマエは兵士達がいなくなったことを確認すると、イアノへ視線を向けてきた。


「イアノ、お前はその小娘とオロナに乗れ」


キマエがそう言うと、オロナはこちらに近付いてきた。

 巨大すぎて、ハイーラの家に入ることができない。しかし、首を下げ、顔だけでも何とかイアノたちに見せようとしてきている。


「私が、ですか?」

「俺がそこの二人を抱えて歩く」


 キマエはそう言うと、ハイーラ達へ視線を移す。

 一瞬何を言われたか分からない様子だったが、直後に二人は大慌てで声を上げた。


「え〜…!?私たちを抱えるんですか〜…!?」

「い、いやいや!歩けますよ!?そんなお気遣いなく…!!」


 いきなり「二人まとめて抱える」と言われては、こうなるのも無理はないだろう。

 しかも、流血や殴打痕こそあるが、二人とも意識はハッキリしているし、ちゃんとふらつくことなく立てている。


「…言い出したら聞きませんわよ、この石頭は」

「石頭とは何だ。一番良いやり方だろうが」

「関係性ってものを考えてくださいね…」


 イアノは呆れたように、焦るハイーラ達へ語りかける。キマエが文句を言ってるが、そんなのは聞こえなかった。


 思えば、昔からそうだ。小さい頃、自分がちょっと膝を擦りむいただけで、キマエにおんぶされた経験もある。その時も、いくら遠慮してもキマエは折れなかった。


「ふらついても困るのでな。いいから大人しく抱えられろ」

「うぅ…」


 やはり、今のキマエも昔と同様に、折れる気はないようだ。

 ハイーラ達は、観念したように項垂れた。


「…まぁ、ともかく、ロンちゃんの背中を借りますわよ」

「ウチの名馬のオロナのことをそう呼ぶのもお前だけだがな…」

「これが、関係性ってものですわよ」


 イアノはそう言いながら、オロナの顔に優しく手を添える。オロナはぶるる、と鼻息を大きく吹き出した。鼻息が、やたらと生暖かい。


 オロナは、自分の認めた悪魔以外、絶対に背中へ乗せない馬だ。自分は小さい頃からの付き合いがあるから良いが、ペルセは問題ないのだろうか。


 そんなオロナは、ペルセの寝顔をじっと見つめている。品定めでもしているのだろうか。

 まるで匂いを嗅ぐかのように、ペルセの顔に鼻を近づけている。自分はあまりに気にならないが、獣臭が強く漂ってくる。


 しばらくすると、オロナは再びぶるる、と鼻息を吐いた。そこに、敵意はない。


 どうやら、認めてくれたらしい。


 ホッと一息をつく。


 しかし、いざオロナに乗ろうとすると、別の問題もあった。


「…どうやってロンちゃんに乗りましょう…」


 イアノ一人なら、鐙も付けられているオロナ相手なら、何なく乗れる。しかし、今はペルセを抱えている。その状態で、体格の大きいオロナに乗るのは、かなり辛い。


 どうしようか思案していると、いきなり体が浮かび上がる感覚があった。

 自分相手にこんなことをするのは、一人しかいない。


「ちょっ…キマエさん!?」

「さっさと乗れ」


 キマエは難なく、ペルセを抱えるイアノを持ち上げていた。今までも持ち上げられることは何回かあったが、大人になってからは初めてだ。


 ーーーやっぱり、キマエは変わってない。


 そう思いながら、イアノは鐙に足を乗せ、オロナの背に跨った。そして、自身の前に、ペルセを座らせる。


 ペルセを落とさないようにしながら、オロナの手綱を握る。乗馬には慣れているが、オロナに乗るのは久し振りだった。


「一度サトゥニアに戻るぞ」


 キマエは両腕にそれぞれハイーラとマールを抱えている。二人を腕の上に乗せるような形であるため、キマエの腕に相当負担がかかってそうだが、そこの心配は不要だろう。


「分かりましたわ。どちらに向かえばよろしくて?」

「ここの通りを真っすぐだ。そこに、俺がここに来るために使った転送陣がある」


 イアノはそれを理解すると、キマエの案内に従い、オロナを動かし始めた。

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