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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
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悪意の濁流

「…さて…」


 ハイーラ達を縛り上げた男達は、ゆっくりとこちらへと向き直る。その目は、完全にペルセの方を向いている。


 そんな中で、一人の男が前へと出る。


 イヤだ。

 怖い。

 気持ち悪い。

 そんな目を。感情を。


 向けてこないで…!!


 しかし、そんなペルセの願いも虚しく、男は醜悪な目を向けてくるのみだった。


 屈強な男。父であるクロニオスほどではないが、鍛えられていることが一目で分かるような体付きだ。


 男はゆっくりと口を開いた。


「…イアノ様。そのお子様の身柄を、こちらにお渡しください」


 男は冷静に、イアノへ頭を下げる。

 その表面上は、落ち着いている。だが、その中身では何かが燻っている。


 イアノの眉間には、シワが寄っていた。


「…何のつもりですの?このような場に、これほどの大軍を引き連れて」

「イアノ様も聞き及んでいるはず。サトゥニアの愚者が、ダスノムの開発を行い、あのクズ連中を引き上げ、秩序の崩壊をさせようとしていることを」


 男はやれやれとでも言いたげに、両手を上げる。


 ーーーダスノムの開発。

 以前、どこかでダスノムの開発のチラシをみたことがある気がする。


 だが、それが一体何なのか。

 自分がこの男達に連れて行かれることと、何の関係があるのか。


「これは…リドン卿の意向でもあります。ゴエティフス家の関係者として見た場合、アナタはまだ第一位の後継者に過ぎない。現職のNo.3であるリドン卿に歯向かうのは、得策ではありませんよ」


 この男は何を言っているのか。

 リドン。ゴエティフス家。後継者。


 全てが、分からない。ただでさえ、気分が悪いのに。


 だが、イアノは苦々しい表情を浮かべている。


「もう一度言います。そのお子様の身柄を、こちらにお渡しください。そうすれば、我々は何もせずにこの場を離れます。あなたの身の安全も…」

「ふざけないで!!」


 男がイアノに再度頭を下げようとすると、ハイーラが大声をあげた。

 拘束されている縄が、大きく体を締め付けていて、苦しそうだ。だが、ハイーラはそんなものを全く気にする様子がない。


「何の権限があって、あんたらにペルセちゃんを渡さないといけないわけ!?あんなに怖がってる子どもが、見えてないの!?」


 ハイーラはジタバタしながら、叫び続ける。しかし、男はまるで動じない。

 それどころか、呆れたようにため息をついている。


 ーーーまずい。

 ハイーラへの敵意が一気に膨れ上がっている。


 ダメ。

 やめて。

 私の大切なハイーラに。


 何もしないで。

 傷付けないで。


「黙っていろ!男を幻惑するしか能のねぇ下等淫魔が!!」

「ぶっ…!?」


 そんな必死の願いも虚しく、男はハイーラの顔面に膝蹴りを食らわせた。


 膝蹴りされたハイーラの顔には大きな傷がつき、鼻が曲がって鼻血が出ていた。


「ハイーラ!?」

「うるせぇクソ淫魔が!!」

「が…!!」


 ハイーラが蹴られたことに対して声をあげたマールさえも、頬へ膝蹴りを入れられ、倒されてしまう。


 ーーー一瞬の出来事だった。

 あまりに刹那的過ぎて、イアノすらも呆然としている。


「…おい、この淫魔共を別の部屋へ連れて行け。うるさくて敵わん。見張ってる間は、好きにして構わん。淫魔だからな」

「ちょっと待ちなさい。…リドン卿がそれを許可されると、本気で思ってるんですの?」


 ペルセが必死に怒りを抑えている横で、イアノが男達の動きを止める。

 しかし、イアノの拳も震えている。相当、深い怒りが内側で燃え上がっている。


 しかし、男は不思議そうな表情を浮かべた。


「ネゴシエートというものは、想定外を起こさないよう、障害を排除して行うもの。あのような下賤な淫魔がいては、高尚な話し合いなど進みませんよ」

「…あの者達が下賤であると…本気で思ってるんですのね…!!」

「むしろ下品な淫魔に、何を期待されてるのです?差し出がましい申し出ですが、ゴエティフス家の正統後継者であるなら、もっとご自身が特別であることを自覚なさったほうがよいか、と」


 段々、男が本音を隠さなくなってきている。

 心の奥底から見える、敵意や嫌悪の感情が、表に出てきている。


 ーーーそれが、余計に気持ち悪かった。

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