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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
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砲撃阻止(物理)

「…クロニオス」

「何だ」


 静かになったサトゥニアの玉座の間。

 そこに玉座に座る魔王サトゥニアと、窓の外を眺めているクロニオスがいた。


「私の判断は、間違っていたのだろうか」


 ーーー二人きりでなければ吐いてこない、魔王サトゥニアの、軽い弱音。

 幹部の中でも特に長い付き合いであるクロニオスにしか見せない一面だ。


「さぁな…。だが、お前はやるべきことをやっていたとは思うぞ」


 クロニオスは、窓の外から視線を外すことなく答える。

 実際のところ、サトゥニアはこれ以上ないほどに説明も情報開示もしていた。それでも聞かない馬鹿者には、相応の対処をするのみだ。


「魔王様…!」


 そんな中、玉座の間にアモディエナが駆け込んできた。

 表情は見えないが、その声から慌ててる様子が手に取るように分かった。


「どうした」

「アスティアノにて、大規模な軍が編成されています…!すでに、攻撃準備がなされているのが確認できています…!!」


 アモディエナは冷静にいようと努めているようだった。しかし、その中に隠しきれない焦りがあった。


 しかし、それとは対照的にクロニオスは冷静だった。


「…心配いらん」

「しかし、この町からアスティアノへ向かう道は、一本道…!万一攻められれば…!!」

「貴様は、会議で聞いていなかったのか?」


 クロニオスは全く振り向くことすらせずに、窓の外を眺め続けている。その視線の先には、とある悪魔の後ろ姿が見えていた。


 その悪魔は、深紅の髪を後頭部の下方でひとつ結びにし、その頭からはヤギのような巻き角を生やしている。

 上半身をボンテージのような服に身を包んでおり、下半身はスリットの入ったスラックスを着ていた。


 久し振りに姿を見たが、安心するほどに全く変わっていない。そんな『女』の後ろ姿が、クロニオスの視界に入っていた。


「…ヤツは…サブリナは、もう『いる』。外を見てみろ」


 クロニオスがそう言うと、アモディエナがその隣にやって来る。そして、サブリナの姿を確認すると、安堵の息を吐いた。


 しかし同時に、途轍もない轟音が響いた。

 その瞬間、遠方から高密度の魔力が飛んできていることを、その場にいる全員が察した。


「オイオイ、宣戦布告すらナシかよ…」


 どうやら、連中は最低限の礼儀すらも忘れたようだ。

 クロニオスは呆れ果ててしまった。


 すると、クロニオスの頭の中に、サブリナの声が魔力通話で飛んできた。


「クロニオス。ワシは好きに動く。それで構わんな?」

「構わん。今回の敵は、どうやらかなりの無礼者だ。戦いの礼儀を知らねぇガキに、お前なりの教育をしてやれ」

「なら、ワシは暴れるだけでよいのじゃな。小難しい話はお主に任せるぞ」


 言いながら、サブリナの方からは咀嚼音が聞こえてくる。また、肉でも食っているのだろうか。


 そう話してる間に、遠くからものすごい勢いで、ボールサイズの魔力弾が飛んできているのが確認できた。

 その魔力弾は、端から見ただけでも、非常に高密度なものであるとわかるほどのものだった。


 それを認識したサブリナは、肉を片手に持ったまま、勢いよく魔力弾に向けて突っ込んだ。


 受け止めるつもりなのか。クロニオスはそう思ったが、サブリナの行動は予想外だった。


 ーーー何と、魔力弾に直接、膝蹴りを食らわせたのだ。しかも、見る限り、魔力も全く込めず、純粋な肉体の力のみの膝蹴りだ。


「…相変わらずの脳筋だな」


 隣で見ているアモディエナも、呆れたような称賛を送る。

 あの魔力弾を肉体のみで受け止めるのは、自分ならまだしも、戦闘特化ではないアモディエナにとっては特にキツいだろう。


 しかし、魔力弾は衝撃を与えられたことで、その場で起爆寸前となっている。


 一応、受けられるだけの防御膜を張るくらいはするか。そう思い、クロニオス魔力を練り上げようとした。


 だが、そんな気遣いすらも、サブリナは気にしてはくれない。勢いの死んだ魔力弾を素手で掴み、軽々と握り潰してみせた。その手にも、魔力は一切こもっていなかった。


 ーーーあれほどの高密度の魔力弾を、何の抵抗もなかったかのように無力化するとは。


 前々から分かっていたが、やはりサブリナはデメナ達とは一線を画す、自分と同等クラスの化物だ。

 改めて、クロニオスはそう認識した。

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