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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
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狂気の演説

 そんな幹部会議から数時間後ーーー。


 アスティアノからサトゥニアの町へと向かう、一本道の道中。


 普段ならただ、直轄部隊の悪魔達が通るくらいしか使い道のない、広い道だ。だが、今その道に、無数の悪魔達が集まっていた。


 一人一人が、それぞれの家紋を刻んだ甲冑に身を包み、兜を身に着け、武器を手に取っている。


 そんな彼らは、一言も発することなく、ただ一点、眼前にある高台を見つめている。これから登壇する者を、出迎えるために。


 空気が張り詰める。

 辺りを見回しても、静か過ぎて、ため息すらも憚られるほどだ。


 すると高台に、甲冑で身を包み、兜をつけた一人の男が現れる。


 ゴエティフス家No.3、リドン卿。

 今回、サトゥニア達を含めた魔王達に反旗を翻した、いわば総指揮官だ。


 リドンは高台の上に登ると、兜を外す。

 老齢で、白髪と白髭を携えた、貫禄のあるリドン卿の顔が露わになった。


 リドン卿は、手元に魔力でマイクを生成すると、それを使って話し始めた。


「…諸君、私の号令にこれだけの人数で応えてくれて、まずは感謝する」


 リドン卿は、仰々しくそう言うと、壇上で軽く頭を下げる。それに合わせ、眼下の兵士達も会釈で返した。


「今回、このような招集をかけた理由は言うまでもない。魔王連中が、ふざけた政策を執り行っていることだ」


 リドン卿の感情が、声に僅かに滲んでいる。そこには、怒りと失望があった。

 リドン卿は手を震わせながら、演説を続ける。


「ダスノムの復旧など、断じて認められるものではない。あそこを復旧させようものなら、ベリアスの罪なき人々が、ダスノムのクズ共に蹂躙されることとなる…。魔王連中は、それが分かってない!!」


 リドン卿の声が大きく、兵士たちのなかには思わず耳を塞ぐ者もいた。しかし、リドン卿は構わず、怒声をあげる。


 すると、リドン卿は懐から一枚の書簡を取り出す。

 つい先程、サトゥニア側が遣いを通さずに直接送ってきたものだ。


「見よ!このようなものを使い、我々をだまくらかそうとする!!会見まで行い、下々の悪魔達をも騙し、我々をも!!だが…!!」


 そう言うと、リドン卿はその書簡を、壇上でビリビリに破いて捨てた。

 紙くずが、周辺に舞っている。しかし、それを気にする者は、誰もいなかった。


「我々は屈しない!!騙されない!!魔界の平和を守るために!!ダスノムは、クズ共の牢獄だ!!そこを引き上げようなどというふざけた政策を、止めさせるのだ!!」


 リドン卿がそこまで言い切ると、兵士達が雄叫びをあげた。

 空気を震わす雄叫びの中、リドン卿は負けず劣らずの大声で叫ぶ。


「皆の者!!陣の前を見よ!!」


 リドン卿の号令に合わせ、兵士達が陣の前方見る。

 そこには、大きな砲台がある。


 ーーーあれには、軍の皆が数日かけて、魔力を込め続けた砲弾が入っている。そんなものが炸裂すれば、半径数キロに渡り、草木の1本も残らない焦土と化すであろう。


 リドン卿は、大きく息を吐いて、冷静さを取り戻した。


「…そんな魔王達に、もはや容赦など不要…。だが砲撃をもってしても、壊滅はさせられない。相手はそれほどの、強大な敵だ」


 リドン卿は低く言い放つ。そのことは、その場にいる誰もが分かっていた。


 サトゥニア達は、怪物だ。

 真正面から宣戦布告などしていては、勝ち目がない。

 ーーー勝つために汚い手を使うことも、やむを得ない。皆、そう思っていた。


「だが、いかに魔王軍とて、これほどの威力を不意に入れられれば、動揺するであろう。その隙を、諸君らが突くのだ!」


 合法的で抜け目のない戦術。

 一部の兵士達は、拍手すらしていた。


「無論、別働隊で揺さぶりの交渉材料も保持させる。そうなれば、奴らを我々を無視できなくなるだろう。奴らに一矢、報いるのだ…!!」


 リドン卿はそう言い切ると、自身の帯刀していた刀を、指揮棒のように砲台の方へと向ける。

 砲台には、すでに砲撃手がいた。


「点火!!戦争開始だ!!」


 その直後、大砲から大地を揺らすほどの轟音が響き渡った。

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