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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
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不穏な気配

 会見から数週間が経った。


 会見から間もなくは、意見箱への投書もまだあった。だが、真摯に答え続けた結果、それも今ではかなり減っていた。


 ダスノムの求人への応募も順調だし、現場監督もキュエル家が中心となって執り行ってくれている。そのおかげか、想定よりも早いペースでダスノムの復旧工事が進んでいる。


 ーーーこの上なく順調だ。

 ある一点を、除いては。


「…集まったな」


 玉座の間の円卓に、サトゥニアを中心とした魔界の幹部達が集まっていた。

 クロニオス、デメナ、アモディエナが、円卓を囲っている。しかし、いつものように一つの空席があった。


「…サブリナさんは?」

「アイツが来るわけねぇだろ」

「ですよねぇ…」


 デメナの問いに、クロニオスがぶっきらぼうに答える。デメナも予想していたようで、呆れたようにため息をついた。


 サトゥニアはそれを気にも留めず、口を開いた。


「デメナ。今回の幹部会議は、お前の発案だ。まずは皆に事情を説明しろ」

「はい」


 デメナは返事をすると、空間に資料を投影した。

 映し出されたのは、とある地図とその現場と思しき写真だった。


 その写真には、おびただしい数の軍が写っていた。


「イアノさんからの報告で、アスティアノの貴族の一部で、大規模な軍隊の編成が確認されています。その数、万は下らないとのこと」


 デメナのその言葉に、クロニオスとアモディエナが息を呑んだ。


 ーーーとことん、嫌な予感というのは当たるものだ。


 これだけでもかなりの脅威だ。しかし、デメナの言葉はまだ続いた。


「指揮する貴族の中には、イアノさんも属するゴエティフス家の幹部もいます。そのことから考えると…」


 デメナはそこで、言葉に詰まる。


 全員の目が、デメナに向けられていた。

 しばらく黙りこくった後、言いにくそうに口を開いた。


「…イアノさんを通じて、ペルセさんの存在が貴族達に漏れてる可能性があります」

「何だと!?」


 その言葉に、クロニオスが声をあげた。

 その大きな声が、玉座の間を震わせる。 


 不器用だが、すっかり父親だ。


 しかし、クロニオスはすぐに落ち着きを取り戻した。さすがの切り替え力である。


「…済まない、続けてくれ」

「恐らく、このままでは武装蜂起をされます。争いを避けるのなら、書簡などを送り、話し合いをすべきかと」


 デメナはそこまで言うと、サトゥニアの方へと視線を向けてきた。


 確かに、反乱を食い止めるためにはそれも有効だろう。だが、あの会見を行い、意見箱の意見まで対応してもなお聞かない連中が、果たしてその程度で止まるだろうか。


「…状況だけサブリナに共有しておけ、クロニオス」

「サトゥニア…お前、まさか…!?」

「書簡は送るが、無視される可能性が高い。全面衝突も起こり得る」


 クロニオスが驚いている。だが、サトゥニアにとって、想定の範囲内のことではあった。


 もちろん起きてほしくはなかったが、会見の時から薄々気付いていた。このダスノム復旧政策に、理屈や不安ではなく、感情で反発する者がいたことに。


「アモディエナ。連中に送る書簡を作ってくれ。こちらに対話の意志があることを示す内容でな」

「分かりました。すぐに取りかかります。送り先は、ゴエティフス家で良いでしょうか?」

「…それで問題ない。ただし、イアノを介さずに直接送れ」


 アモディエナはそう言うと、すぐに筆をとり、書簡を作り始めた。

 アモディエナならば心配はいらない。そう思い、続けてデメナへ視線を向ける。


「ペルセ周りについては、お前が独自で動いて構わない。必要なら、こちらから追加で護衛を派遣する」

「一先ず、イアノさんを護衛として送ります」


 イアノを護衛として送る。

 若干、不安は残る。しかしながら、警戒なくペルセに近付けるのがイアノしかいないのも事実だ。


「…分かった。皆の者、アスティアノの貴族連中と戦争になる可能性が高い。各々、備えておくように」


 サトゥニアはそう宣言し、幹部会議を閉める。


 ーーーこれでよいのか。

 サトゥニアには判断ができない。


 だが、連中が戦うつもりで来るなら、こちらも容赦しない。

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