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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
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会見の後処理

「…はぁ…」


 最後まで会見の公式魔力通話に繋いでいた悪魔が、つい先程、ようやく接続を切った。


 ようやく、会見が終わった。


 ダスノム改善改革について、様々な意見や質問が飛んできた。


 19時からという、皆が在宅しているであろう時間を狙い、会見を執り行ったことで、大勢の悪魔達が見て、参加していたことだろう。


 サトゥニアは椅子に深く座り、背もたれに身を預ける。


 ーーーどれだけ、話したか。どれだけ、言葉を尽くしたか。


 正直、覚えていない。


 だが、一つだけ確かなことがある。

 少なくとも、今自分の持てる限りの説明をし、できる限りの応対はした、ということ。持てるものは、全て出し切った。


 だからこそ、疲労感がどっと押し寄せてきた。それを、隠すこともできなかった。


 ふと、時計に目を向ける。その針は、とうに日付が変わってしまっていることを示していた。


「…さて…」


 しかしながら、休んでいる場合でもない。まだ、やらなければならないことが残っている。


 軽く腕を伸ばし、凝り固まった体をほぐす。

 すると、目の前に湯気を上げる湯飲みが差し出された。


「お疲れ様でした、魔王様」


 そこにいたのは、ずっと会見の裏方として働き続けた、アモディエナだった。

 進行管理、接続の管理、質問の整理など。そういった調整を、全て担っていた。

 その顔には、さすがに疲労が滲んでいた。


「無理難題に付き合わせて済まなかった。先に帰ってよいぞ」

「いえ…私も、最後までお付き合いしますよ」


 会見の後処理。可能なら、自分一人でやってしまいたい。

 だが、アモディエナが手伝ってくれるのなら、かなり助かる。とはいえ、アモディエナにも無理させたくはない。


 しかしながら、アモディエナも引くつもりはないようだった。


「…分かった。どうせなら手早く済ませるぞ」

「えぇ」


 そう言うと、サトゥニア達は、会見の後処理に取りかかろうとした。


 すると、サトゥニアの背後から、夜風が吹き込んでくる。それと同時に、酒の臭いが鼻腔をくすぐった。


 こんな夜更けに、来客か。

 ーーー否。こんな無礼な来訪をしてくる者など、一人しかいない。


「…こんな夜中に何の用だ…サブリナ」

「何じゃ…ワシが来てはならんかったのか?」


 サトゥニアは振り向くことすらせずに、背後の悪魔に声をかける。

 サブリナは楽しそうにケラケラ笑いながら、酒をあおっている。


「会見、見させてもらったぞ。あんなこと、ようやりおるわ…」


 サブリナは落ち着いた様子でそう言った。


 ーーーあの会見を、見たのか。

 幹部会議に招集しても来ないほどに、政が嫌いなサブリナが。


 少し感心しかけたが、サブリナが再び豪快に笑い出した。


「ワシなら数十分で寝てしまう自信があるわ!!」

「…邪魔しに来たのなら、帰れ」


 そんなサブリナに、アモディエナはそちらに視線を向けることなく言い放つ。この光景も、いつものことだ。


「お主は頭が硬いのう…。もうちと、自由に生きても良いのじゃぞ?」

「頭が硬くて結構。お前より自由に生きてる悪魔を見たことがないのでな」


 呆れたように言うサブリナに、アモディエナも面倒そうにしながら対応している。その間も、アモディエナの手は止まっていない。


 やはり、二人で作業をして正解であった。

 こうやって話している間に、後処理のほとんどが完了している。さすがは、アモディエナだ。


「…サブリナ」

「む?」

「会見を見たなら気付いてるかもしれないが、場合によっては貴様の力を借りる必要があるかもしれん」


 相変わらず、背後で飲み続けてるサブリナに声をかけた。


 サブリナは政治のような難しい話や、事務作業のような細かい作業が嫌いなだけで、阿呆ではない。恐らく、サブリナなら分かるはずだ。


「…ワシに頼るということは、『そういうこと』か?」

「可能性の話だ。万が一もあるのでな」


 思った通り、サブリナは分かっているようだった。


 不安の種を残しながらも、サトゥニアの夜は、更けていくーーー。

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