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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第五章 ダスノム改善とその歪み
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魔王の決意と覚悟

 一方、サトゥニアにてーーー。


 玉座の間の円卓に、魔王サトゥニアと、アモディエナが向かい合って座っている。

 その眼前には、無数の書類が積み上がっていた。


「これは…?」

「我々の執り行うダスノム復旧政策への、意見陳述書です」


 アモディエナがそう言うと、サトゥニアは目の前にある書類を一枚手に取り、中身を読んだ。その直後、サトゥニアの眉間にシワが寄った。


『ダスノム優遇政策撤廃の嘆願』


 何枚書類を手に取っても、似たような内容ばかり書かれている。枚数を重ねるにつれ、表情も険しくなっていった。


「…ダスノムの復旧は、急進かつ革命的な内容なので、多少なりとも反発を生むとは予想していましたが…」


 アモディエナは気まずそうに口を開いた。


 確かに、サトゥニアもそれを予想していなかったわけではない。急激な改革で、多少なりとも歪を生むのは、百も承知だった。


 しかしながら、目の前に積み上がる嘆願書の数は、多少などと言ってられるような量ではない。しかも、そこに書かれてる署名が、無視できるような名前ではなかった。


「こいつらは、アスティアノの貴族連中の名だな」


 イアノのいるゴエティフス家や、その他の名家の幹部の名前もあった。それを見て、サトゥニアは頭を抱えた。


 これほどの数の貴族連中が、ダスノムの復旧に反発しているとなると、さすがに無視をすることはできない。


「…魔王様、いかがいたしましょうか?」


 そんなサトゥニアの内面を知ってか知らずか、アモディエナは冷静に尋ねてくる。


 無論、ダスノム復旧を止める気など毛頭ない。

 クロニオスやデメナが子供を失った時の崩れ方を、あの親子に降りかかった理不尽を知る側として、そこは譲れない。


 だが、このまま力押しで進めることもできない。


 そう思い、改めて書類を見る。

 ふと、『優遇』という文字の並びが、目に入った。


「…待てよ。そもそもこの署名に名を連ねている者達は、我々の政策を『ダスノムへの優遇』だと思っているのか」

「え?…あぁ、表題を見る限りだとそのようですね」


 サトゥニアもアモディエナも、見落としていた。

 そして、同時にサトゥニアは気付いた。


 貴族連中は、どうやら前提から思い違いをしている。

 これは、優遇ではない。底辺で無法地帯だった場所を、悪魔達がまともに過ごせる場所へと生まれ変わらせようとしているだけだ。


 ーーーそうなれば、やるべきことは一つだ。


「アモディエナ」

「はい」


 サトゥニアは書類を一度まとめる。

 何度見ても、圧倒される枚数だ。これらに署名した全ての者に対応するのに、個別対応では時間がかかり過ぎる。


「アスティアノ、ベリアス、ダスノム、全ての町に公的伝達を。『2日後の19時より、魔王サトゥニアによる、ダスノム改革に関する公的会見を執り行う』と。『出てきた質問には全て答えるし、時間も無制限で行う』と」

「魔王様…それは、かなりの負担では…?」

「構わん。これだけの反発を生んだのだ、私が説明責任を果たすのみ」


 画面越しではあるが、魔界全てに向けて会見を行う。現場の悪魔達から質問や不満が出たら、全て答えてみせる。


 サトゥニアには、それだけの覚悟があった。心配していたアモディエナも、覚悟のにじんだその目を見て、ため息をついた。


「…かしこまりました。こちらの方で、会見の手筈は整えますよ」

「無茶を言って済まないな。頼むぞ」


 アモディエナは半分呆れたように了承した。

 何だかんだ言いつつも、結局こういう裏方作業をやってくれる。頼りになる男だ。


「私も、準備をしておかねばな…」


 サトゥニアはアモディエナに聞こえないように、静かにそう呟いた。

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