改善への第一歩
そこから、あっという間に数カ月の時が流れた。
ペルセは変わらず、アスティアノにあるハイーラの家で、ハイーラ、マールの三人と平和に暮らしていた。
時折、サトゥニアへ泊まりがけで鍛錬に行き、家族の時間も過ごせている。
ここ最近、ペルセが笑ってることも増えた。それに釣られる形で、マールもよく笑うようになってる気がする。
今日も今日とて、三人で買い物に来ている。マールとハイーラの間に、ペルセが挟まれており、二人と手を繋いで歩いていた。
「今日のご飯は何にしよっか〜」
「今日はお魚の気分!!」
マールとペルセが、今日の晩御飯について相談している。ご飯を作るのは自分なのだが、そこに口を挟む気はなかった。
魚のコーナーの方へ目を向けると、壁に貼られてる一枚のチラシが目に止まった。
『ダスノム復旧工事 人手募集中』
そんなキャッチコピーの書かれた求人チラシだった。チラシには、工事現場で笑顔で働く男性の姿がデカデカと写っている。
ペルセの育った場所が、改善されるのか。ゴミ山だったダスノムが、変わってきている。
そう思うと、何だか目を離せなかった。
「あれ〜?ダスノムで工事やるんだ〜」
マールもチラシの存在に気付いたようだ。その声に釣られて、ペルセもチラシを見る。
何だか、ペルセは寂しそうな顔をしている。やはり、生まれ育った故郷が変えられるのは、複雑なのだろうか。
「…ペルセちゃん」
「良かった。やっと…変わるんだね」
なんて声をかけようか困っていると、ペルセは口角を上げた。
素直に変わることを喜んでいる。
ただただ、嬉しそうに笑っているだけだった。
最近のペルセの成長ぶりには、驚かされる。
根が素直で、純粋だからこそなのだろうか。
そんな中、チラシを見た周りの悪魔達の噂話も聞こえてくる。
「何あれ?ダスノム復旧?」
「あんな底辺を?そんなものにお金使うなんて…」
「噂だと、名家の方々が直々に動いてるらしいぞ…」
「マジか…。それだけ、本気なのかな…」
ーーーやはり、まだダスノムを好意的に受け入れるような意見は少ない。だが、積極的に嫌っているわけではないようだ。
とはいえ、陰口がこの程度で済んでいるだけ、まだ良い方だろう。過激な意見が出てくる前に、ペルセの手を引いた。
「魚が食べたいんでしょ?鮮魚コーナーはあっちよ」
「はーい」
ハイーラが手を引っ張ると、ペルセは素直についてきた。この娘がダスノムの育ちなど、もはや誰が信じられるだろうか。
こんなに純粋で、こんなに愛らしい、ただの少女が。ほんの数ヶ月前まで、ダスノムでゴミをあさって暮らしていたなど。
「ふんふんふーん」
ペルセは腕を大きく振りながら、鼻歌を歌っている。手を繋いでいるため、ハイーラ達の腕も巻き込まれていた。
ーーーでも、それを止める気もない。
ペルセの心底楽しそうな表情を見ると、自分の腕を振られることなど、些細なことだった。
マールも同じように、ペルセのことを穏やかな笑みで見守るだけだった。
まさに、平穏だった。
ーーーだが、裏では確実に、動いていた。
そこに気付く者は、誰一人として存在しない。




