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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第四章 家族の絆
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母の折衷案

 一体、デメナは何を考えているのだろうか。

 ハイーラもマールも、そしてペルセも、息を呑んでデメナを見る。


 デメナは手元に紙を広げている。しかし、そちらには視線を全く向けることなく、口を開いた。


「私の考えたプランをお伝えさせていただきます」


 やはり、デメナなりの考えがあるようだ。

 まったく、見当がつかない。


「まず、基本的に、ペルセさんはアスティアノのハイーラさんのところに住むのが良いかと思っています」


 デメナは淡々と述べている。


 ーーー辛くはないのか。

 ようやく会えた娘と、一緒に過ごす時間を、自ら減らすような提案だと言うのに。


 もし自分がデメナの立場だったら、耐えられる自信がない。母としての立場と、サトゥニア幹部の権限も全て使って、娘を呼び寄せるだろう。


「ただ、これからは、鍛錬に来た際に、私達との家族の時間を設けさせていただきます。…可能なら、泊まりがけも含めて」


 最後の言葉に、ペルセが勢いよく顔を上げる。その顔は、驚愕と歓喜の混ざったような、複雑な表情だった。


「お母さん達と、ごはん食べれるの!?一緒に寝れるの!?」

「…はい。それをする時間だけは、設けさせてほしい。それだけが、私の…母としてのワガママです」


 デメナはそれだけ言うと、頭を深く下げる。


 これには、かなり驚いた。聞いていたマールも、同様のようで、口をあんぐり開けている。


 話を聞く限り、愛情深い母親だとは思っていた。

 でも、ここまで自分を殺して、娘の、ペルセのことを優先している。


 恐らく、本音はずっと一緒にいたいし、一緒に暮らしたいのだろう。でも、それをこちらに強制してこない。


 母としての、娘への想いが、あまりにも強い。身内を迫害し続けた、キーアのような者ばかり見てきたハイーラにとって、もはやデメナが未知の存在に見えてきた。


「…お母さん…ありがとう」


 隣にいるペルセが、笑っている。しかし、その目からは涙がしたたり落ちていた。


 釣られて、泣いてしまいそうになる。

 ーーーいけない。

 この前も、マールの前で大泣きしたばかりだというのに。


 手放さなくていい。

 この、大切な子を。純粋なペルセを。

 親公認で、自分も関わり続けられる。

 しかも、大親友のマールと共に。


 ーーーそれがたまらなく、嬉しかった。


「…もちろん、ペルセさんの生活費に伴う諸経費などは、こちらから援助します。毎月、部下のイアノを通じて、送金させていただきます」


 頭を上げたデメナは、変わらない冷静な声でそう言った。


 いきなり現実的な話をされて、涙が引っ込んでしまった。でも、それがありがたかった。


 特にお金には困っていない。しかし、デメナの好意を無下にするべきではないだろう。


「…助かります」

「この方針で、大丈夫ですか?」

「…はい」


 デメナの問いに、ハイーラは頷いた。

 何だか、こちらを見てるマールの口角が、満足げに上がっている気がする。


 ーーー何だか、癪に障る。


 だが、何も言えない。何か言う気もない。


 今はただ、ペルセと一緒に暮らし続けられる嬉しさを噛み締めていたい。自然と口角が上がっていく。


 そんなハイーラを見て、デメナも頬が緩んでいるようだ。穏やかな笑みを浮かべている。


「細かい部分はまた、後日打ち合わせしましょう」

「…わかりました」


 ハイーラの返事を聞いたデメナは、最後に会釈をすると、画面の前から離席してしまった。

 その直後、画面にイアノが映る。


「…ハイーラさん、よかったですわね」

「はい」


 良かった。本当に、良かった。

 大切なペルセと、これからも一緒にいられる。それだけで、十分だった。


 隣にいるマールもペルセも、嬉しそうだ。

 一緒に暮らし続けられる。しかも、親公認の上で、堂々と。


「また、ご連絡する際には、私の方からさせていただきます」

「分かりました」


 イアノはそれだけ言うと、会釈の後、画面を切った。


 ーーーようやく、終わった。

 ハイーラは脱力し、椅子へと寄りかかる。


 マールとペルセは、すでに遊び始めている。この光景も、今後も見続けられる。

 それが、何よりも嬉しかった。

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