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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第四章 家族の絆
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ペルセの意志と制度の弊害

 空気が固まる。


 どういうつもりなのか。

 別れるのが、辛いのか。


 ペルセは肩を上下させながら、こちらを見つめてくる。目尻には、涙が浮かんでいる。


 そんな表情をされても、実の親のもとに行くのが、最も単純だ。その事実は、ハイーラの中では揺るがない。


「…ペルセちゃん?お母さんのもとに、行きたくはないの?」


 ハイーラは諭すつもりで、ペルセに声をかける。しかし、ペルセの様子は変わらない。


 ハイーラは大人として、辛くても身を引くつもりだったのに。そんな反応をされては、自分の気持ちが揺らいでしまうではないか。


「行きたいよ!!でも、ハイーラさん達と別れたくないよ!!」

「…ペルセ…」


 ペルセは涙をこぼしながら、思い切り叫んでいる。

 そこには、理屈も何もあったものではない。


 一緒にいたい、と言われるのは嬉しい。でも、そんなワガママが通るはずもない。


「だけど、お母さんといるのが、一番単純で…」

「そんなの関係ない!!私は、ハイーラさん達とも一緒にいたいの!!」


 ーーーまずい。

 このままでは、話が堂々巡りになりかねない。


 話題を変えようと何か言おうと瞬間、マールと視線が合った。

 マールは何も言わず、ただこちらを見つめてくるだけだ。

 だが、長年の付き合いからか、言葉を交わさずともマールの言いたいことが伝わってくる。


「これが、ペルセの意志だよ」…と目線で訴えている。それが、余計に辛かった。


「…なるほど…やはり…」


 画面の向こう側で、デメナが顎に手を添え、静かに頷いている。その声にハッとし、デメナの方を向く。


 何かを確信したような、そんな表情だ。


 一体、何に納得しているのだろうか。

 ハイーラはデメナの次の言葉へ、意識を集中させた。


「思った通りです。ハイーラさん達の元から離すべきではありませんね」


 その言葉に、ハイーラは頭をぶん殴られたような衝撃を受けた。


 デメナは今、何を言ったか。

 ペルセをここに残す、ということか。

 母として、自分と暮らしたいわけではないのか。


「あ〜…やっぱり、こうなるか〜」


 マールも静かに頷いていた。

 まさか、マールも予想がついていたというのか。


 もしそうなら、分かっていなかったのは、勝手に結論を急いでいたのは自分だけだった、ということになる。


 ーーー自分の目だけが、曇っていたのか。


「…お母さん…?お母さんがこっちに来たりはできないの…?」


 ペルセは画面越しの母へ、泣きながら声をかける。


 確かに、それならハイーラも納得だ。だが、デメナの顔は浮かない表情だった。


「…それは、できないんです」

「なんで!!」


 ペルセは納得がいかないようで、感情的に叫ぶ。


 一体、なぜなのか。サトゥニアの幹部であるとはいえ、悪魔であることに変わりはない。

 別に、アスティアノで暮らせないわけではないはずだ。


「私達サトゥニアの幹部悪魔というのは、魔力の質がかなり違います。そちらに行くと、魔力インフラ等を、破壊してしまいかねないのです」

「…あぁ…」


 そういえば、初めてサトゥニアにお呼ばれした時に、似たようなことをアモディエナが言っていた気がする。


 デメナがこちらに容易に来れない理由としては、納得のものだ。


「皆で一緒に、って、できないの…?」

「こればかりは…規則上、そして安全上、できないことなんです。ペルセさん」


 ペルセは納得いってなさそうだったが、母の言葉で動きを止めた。

 伝えるデメナの顔も、受け止めるペルセの顔も、苦しそうだ。母娘の同じような顔が、似たように歪んでいる。


「…ただ、今生の別れにするつもりは、ありませんよ」


 デメナはそう口火を切り、静かに語り始めた。

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