町はずれの見破り
「おいおい、何が起きたんだ…」
「部屋が丸ごと吹き飛ばされてる…!!」
ペルセが群衆に紛れて外に出ると、大騒ぎだった。店の前には、人だかりができている。
外から見ても、土埃がもうもうとあがっており、店にポッカリ穴が開いたかのような状態になっている。その有様を見て、群衆たちは様々な反応をしているようだった。
「うわ、っと…」
群衆の中の足に引っかかる。思わず、転びそうになった。しかし、誰かの腕に支えられ、転ぶことはなかった。
「あ、ごめんなさい…」
見上げてみると、少し年がいってそうな女性と目が合った。女性は眉を顰めつつ、転びそうになっているペルセの体を、優しく起こしてやった。
「…こっちこそ、ごめんなさい」
「いいえ、全然大丈夫よ。気をつけなさいね」
---あまり、この場にはいたくない。
そう感じたペルセは、その場で女性に軽く謝り、その場を足早に去っていった。
「…はぁ、はぁ…」
さすがに、もう走れない。
息を切らしながら、ペルセは近くの大木に寄りかかった。
---一体、どのくらい走ったか---。そう思いながら、辺りを見回した。
先程いた場所と比べると、地面は土のまま整っていないし、建物もボロボロで汚くなっている。
ダスノムよりは小綺麗だが…何だか、同じような雰囲気を感じる。
「…逃げてきて、良かったのかな…」
別に、自分が悪いことをした、とは思っていない。しかし、自分が何かしでかしたことは、周りの状況からしても間違いなさそうだ。
だが、いくら何でも、心当たりのないことでは謝れない。
「す~き~、きら~い~…」
「ん…?」
ペルセが息を整えていると、自分のものではない声が聞こえてきた。気怠そうな、のんびりとした女の声が…。
同時に、ひらひらと、自分の足元に何か白く、柔らかそうな欠片が落ちてきている。
思わず、自分の頭上に目を向けた。太い枝の上、そこに間違いなく誰かがいた。
---紫色の髪を側面で束ねており、風に吹かれている。
より気になるのは、ダスノムの悪魔達にはなかった、大きく曲がった黒い角と、漆黒の小さい羽。それが体から生えていた。
そんな女が、枝の上に寝転びながら、白い欠片を自分の方に落としてきている。
「…ん~…?」
しばらくペルセが様子をうかがっていると、女が動き出した。
気づかれた。隠れる場所もない。---いやそもそも隠れる必要があるのか?
自分の中で押し問答をしているうちに、相手はゆっくりとペルセの方に顔を向けた。
非常に眠そうな表情をしている。
「…あれ~?こんな町はずれにお客さん~?」
相手は枝の上から降りることもせず、眼下にいるペルセを見つめてきた。
町での対応とはまるで違う。あまりに変わり過ぎて、逆にペルセは動くことができなかった。
「キミ、この辺では見ない顔だね~」
女はそういうと、寝返りをうつような動作をし、枝の上からするりと落ちてきた。
落下の衝撃で土ぼこりが舞い、思わずペルセも顔をしかめた。
「何で落ちてくるのよ!?普通に飛び降りるとかしないの…!?」
「ん~…動きたくなくてね~…」
文句を言うペルセに対し、女は特に気にも留めない様子で、立ち上がりながら自身の服についた土ぼこりを雑にはらった。
「もう、何なのよ…」
このままでは、また面倒ごとに巻き込まれそうだ。
ペルセは、この場から離れようと、再び歩き出した。
---しかし、次の一言で、ペルセの歩みが止まることになる。
「さっきの爆発騒ぎ、ひょっとしてあなたの仕業~?」
その瞬間、ペルセの空気が止まった---。




