ペルセの暴走ー制御不能の力ー
---無限とも思える、沈黙の時間だった。
ダスノムの名前を出してから、店員は全くこちらに声をかけてこようともしない。何なら、視線を合わせようともしてこない。
一部の店員は、ペルセが視線を向けると、気まずそうに顔を伏せたりはしていたが、基本は変わらなかった。
一体、何なのか。先程の会話とは、何か関係があるのか。
そんなことを考えていると、部屋の外が騒がしくなった。同時に、汚れ一つない白装束をまとった、複数の男が部屋に入ってきた。
「お呼び立てして申し訳ございません」
「全然かまいませんよ。…それで、該当のものはどちらに?」
「…こちらです」
一人の店員がためらいつつ、男たちをペルセたちのもとへ導く。一体、何の用だろうか。
男たちと視線が合う。その視線には、見覚えがあった。
「…何?おじさんたち、誰?」
近づいてくる男たちに、ペルセは声をかけた。しかし、男達からの返事は返ってこない。
…意味が分からない。どういうつもりなのか。
「…さぁ、『お嬢ちゃん』。俺らと一緒に、行こうか」
男はまるで、幼子を諭すように、優しく、穏やかに声をかけてきた。
---その時の男の表情を見て、一気に息が詰まる、そんな感覚を覚えた。
---『貴様らは悪魔の恥晒し。消えてもらうのは当然だ』---
…そう、言い放った、あの時の襲撃者と、同じ表情だった。
自分からすべてを奪い去った、あの悪魔と---。
「ひっ…!?」
思わず身じろぎし、座っていた椅子から落ちてしまった。
足がすくみ、立ち上がることができない。尻を動かし、情けなく後ずさりすることしかできなかった。
「…どうしたのかな?怖いのかな。大丈夫、怖くないよ。ちゃんとしたところに、連れて行ってあげるから」
男たちは、表情を一切変えることなく、ペルセ達に近づいてくる。
助けを求めるように、周りに視線を向けても、誰も自分の方を見ない。
---あの時と、同じ。
いや、あの時よりも、悪い。
そう気づいたときには、すでに壁に背中が当たる感触があった。
男たちは、なおも表情を張り付けて近づいてくる。
---怖い。
怖い、怖い、怖い。
来ないで…来ないで…。
---私に近づかないで。
そう思っても、なお男たちは近づいてくる。あの表情を、浮かべたまま。
ペルセの恐怖は、限界に達していた。
「いやっ!!!!!!!来ないで!!!!!!」
ペルセの叫びが、店中に木霊した。
---彼女が記憶していたのは、そこまでだった。
ペルセが気づいたときには、室内にいたにもかかわらず、視界に魔界の暗い空が広がっていた。
「…え…?」
自分が何をしたか分からない。何が起きたのかも分からない。
辺りを見ると、瓦礫が散乱しており、周りの悪魔達が大騒ぎしているのに気づいた。
そして、白装束の男達は、部屋の壁にもたれかかるようにして、全員倒れている。
---あたかも、何かに吹き飛ばされたかのように。
「…ここ、さっさと出ないと…」
またあの白装束の男たちに詰め寄られても困る。
ペルセはそう判断し、店を出ることにした。




