表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第四章 家族の絆
PR
108/136

母の提案

 お祝いのすき焼きを食べた日から、数日が経った。

 マールやペルセとの平穏な日々が続いている。


 食事と片付けを終え、ふとリビングに視線を向けると、マールとペルセが、玩具を用いて遊んでいる。


 魔力を注入すると、独特な動きを見せたり、声を発したりするタイプの、人形の玩具だ。どうやら、マールはペルセのお人形遊びに付き合っているらしい。


 ーーーますます、少女らしくなってきた。

 ペルセが人形を動かしながら声を当て、マールがそれに気の抜けた返事をしている。


 本来ならば、この光景を見たり、ペルセの遊び相手をするのは、親の役割なのだろう。


 そう思うと、胸の奥が少し痛んだ。


「…ハイーラさん、聞こえますか?」

「ッ!?」


 突如、頭の中に声が響く。ハイーラの体が大きく跳ねる。


 慌てて周囲へ視線を向けるが、自分に語りかけてくる者はいない。


 この感じは、魔力通話だ。相手の魔力と自分の魔力とをリンクさせ、相手の頭の中へテレパシーのように語りかける。魔力の応用法だ。

 だが、誰にでも使える手法ではない。ある程度相手の魔力も理解していないと不可能だ。遠方からやるとなると、なおさら。

 自身の魔力を知ってて親しい相手。もしくは高い技術を持つ者。そのどちらかしかない。


 そんな性質上、自分のことを全く知らない者が語りかけてくるのは不可能だ。


 ーーー一体、誰なのだろうか。


「…どなた様でしょうか」


 ハイーラがこの質問を返すのは、必然だった。通話の相手は、それに驚いた様子もなく、淡々と答えた。


「突然の通話、失礼します。こちらサトゥニア直轄、魔界後方支援部所属のイアノですわ」

「…えっ?」


 今、相手はイアノと言ったか。


 あの、いつもペルセの迎えに来る女性。

 だが、ゴエティフス家ではなく、サトゥニア直轄と言った。


 魔王様やその幹部に、直接仕えてる悪魔。

 そんな相手だったのか。


 でも、確かにイアノにはかなり技術がある。キーアと対峙した時、渾身の幻惑を一瞬で解析しきり、変質させた上で跳ね返した程に。


「…イアノ、さん…!?」


 驚きのあまり、言葉に詰まる。そんなイアノが、一体何の用なのだろうか。思わず、背筋が伸びた。

 そんなハイーラとは対照的に、イアノは冷静に言葉を紡いできた。


「私の直属の上司にあたります、ペルセちゃんの母上・デメナ様より言伝を預かっておりますわ」


 ーーーペルセの母。

 その言葉が聞こえてきた瞬間、ハイーラは悟った。


 とうとう、別れの時が、来てしまった。

 無意識に、玩具で遊び続けてるペルセに視線を向ける。


 やだ。

 まだ、離れたくない。

 あの、可愛くて、真っ直ぐで、手間のかかるいい子を。

 でも、実の母の元に行かせるのが、いいに決まっている。

 自分の元で、縛るべきではない。


「…ペルセちゃんの、ことですか?」


 ハイーラは恐る恐る尋ねる。

 できれば、違っていてほしい。でも、その願いは、無情にも打ち砕かれた。


「えぇ。ペルセちゃんについて…」


 やめて。

 聞きたくない。

 でも、耳を塞いだところで、意味がない。

 これは、そういう通話だ。

 便利な手段だが、今回に限っては、疎ましい。


「私の直属の上司・デメナ様が、『サトゥニアの悪魔』ではなく『一人の母』として、『ペルセちゃんの保護者』であるハイーラさんとお話をされたい、とのことでしたわ」


 ーーー保護者?

 今、自分を保護者と言ったか。実の母が。

 仮初めの世話役。それに過ぎない、自分に対して。


 ハイーラは、呆然とした。あまりに、実感が湧かない。


「画面越しの通話を行いますが…可能なら、今から大丈夫でしょうか?」


 画面越し。

 直接会わなくていいとはいえ、ペルセの実母と話をする。

 こんな緊張することがあるだろうか。

 だがーーー


「…30分ください。準備します」

「分かりましたわ」


 対応しない、という手はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ