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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第四章 家族の絆
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マールの手料理

「…ふう…」


 シャワーを浴び終え、ペルセは着替えた。


 いつも着ている、黒いワンピース。

 最初は、着方も分からなかった。

 でも、もうすっかり着慣れたものだ。


 ドライヤーで髪を乾かし、二つ結びにする。


 マールやハイーラから身だしなみを教わり、大分様になってきた気もしている。


「…よし」


 鏡で自身の姿を確認する。

 完ぺきではない。でも、なかなか良い感じにできた。


 これ以上時間をかけると、味噌汁が冷めてしまう。

 ペルセは急ぎ足で風呂場の外へ出た。


 そこには、ハイーラが待っていた。

 先ほどとは異なり、いつも通りのハイーラの顔だ。


「…ちゃんと、自分でできたわね。いいじゃない」


 ハイーラはペルセの姿を見て、嬉しそうに頬を緩めた。

 褒められて、ペルセの口角も自然と上がる。


 ペルセが入浴している間に、ハイーラは顔を洗い終わっていたようだ。何だか、スッキリしたような表情をしている。


「…戻りましょうか」

「うんっ!」


 ハイーラはペルセの手を握ってきた。

 ペルセはその手を握り返し、嬉しそうに歩き出した。


「あ〜、お帰り〜」


 リビングでは、マールが準備を完全に終わらせているようだった。マールはすでに、椅子に腰掛けて、二人を待っていた。


 机の上には、味噌汁と白飯が三人分、配膳されている。味噌汁からは、まだ湯気が上がっていた。


 ペルセ達はいつもの席に座った。

 味噌汁の中身は、豆腐と油揚げに、ネギ。非常にシンプルなものだった。


「勝手に台所の食材使っちゃってゴメンね〜」

「そこは別にいいのよ。…つーかさ…」


 ハイーラはマールに特に責め立てる様子はない。ただ、まだ言葉が続きそうだ。

 マールは不思議そうに首を傾げている。


「あんた、料理できるのね」

「シンプルなものならね〜」

「…普段からやりなさいよ」


 ハイーラは深く息を吐いた。マールはそれに対し、何も気にした様子もなく、静かに笑っているだけだった。


 シンプル?

 味噌汁を作ることが?


 以前、味噌汁の作り方をハイーラに教わろうとした。だが、手順が多過ぎて、ペルセはオーバーヒートしてしまったことを思い出した。


 ーーーマールは、別に家事スキルが低いわけではないようだ。

 ただ、やらない、やる気がないだけで。


 実際、目の前にある味噌汁からは、お腹のすく美味しそうな匂いが漂ってきている。


 ペルセは、そろそろ我慢の限界だった。思い切り、手を合わせる。


「いただきまーす!!」


 ペルセはマール達の返事も待たず、入ったお椀を両手で持ち、そのまま味噌汁を口に運んだ。


 ーーー美味しい。


 ハイーラの作るものとは、少し違う。マールのは、ちょっと味が濃い。

 中の具材の切り方も、かなり粗い。


 豆腐と厚揚げを口に運ぶ。

 味噌の味が染みてて、これらも美味しかった。


「…どうやら、ちゃんと作れてるみたいね」


 ハイーラも白飯を食べながら、うんうん頷いていた。どうやら、普段料理を作るハイーラも納得の味らしい。


「いつも作るのは勘弁だよ〜。ハイーラの方が上手なんだし〜」

「安心しなさい。あんたにそんなマメなこと期待してないから」

「ひど〜い」


 相変わらず、マールへの扱いが雑だ。

 でも、マールがその気になれば、ちゃんとご飯を作れるのか。


 もちろん、ハイーラの作るご飯は美味しい。

 ーーーでも、マールの作るご飯を、たまに食べてみるのも良いかもしれない。


 そしていつか、自分がハイーラ達に料理を振る舞う日が来るのかもしれない。


 それも、『家族』なのだろう。

 そう思いながら、味噌汁を飲む。


 やっぱり、暖かった。

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