余韻
「…んん…っ…」
朝を迎える。
ペルセはベッドから起き上がる。
昨日は、色々なことがあった。
マールとこれからも一緒にいられる。
実の親と会えた。
抱き締められたし、抱っこもされた。
そして、マール達と食卓を囲んで、幸せな食事ができた。
こんなに幸せな一日が、今までにあっただろうか。
そう思うと、胸の奥が熱くなった。
ペルセは、ふと自身の頬をつねってみた。
「…いたっ…」
小さな痛みが走る。ちゃんと痛かった。
これは、夢ではない。
昨日の出来事も。
ママに会えたこと。
パパに抱っこしてもらったこと。
今、この場にいることも。
ーーー現実なんだ。
ペルセは頬を擦りながら、ベッドから立ち上がる。
じんわりとした頬の痛みが、何だか嬉しい。思わず、口元が緩む。
そのまま、風呂場へと向かう。昨晩、風呂に入らずに寝てしまったから、シャワーを浴びないと気持ちが悪くて仕方ない。
こんな感情、ダスノムにいた頃には抱かなかった。
すると、扉の隙間から、何かが見える。
ハイーラが机に突っ伏して、寝ている。
珍しい。
いつもなら、自分が起き出す頃には、ハイーラは起き出して朝食を作っているはずだ。
にも関わらず、目の前のハイーラは完全にダウンしている。
「ハイーラさん…?」
嫌な予感がする。
一体、何があったのか。ペルセは慌ててハイーラに駆け寄った。
「ハイーラさん!!大丈夫!?」
「…んんっ…」
ペルセがハイーラの肩を揺する。すると、ハイーラはわずかに身じろぎをした。
ハイーラはゆっくりと顔を上げる。その顔は、何だか赤く腫れぼったくなっていた。
「ちょっ…ハイーラさん!?その顔どうしたの!?」
ペルセはその顔を見て、胸がざわめいた。
ハイーラのそんな顔なんて見たことがない。
「…え?今、何時?」
「もう8時だよ!?」
ハイーラはぼんやりとしていた。だが、ペルセの顔を見て、時間を告げられると、一気に顔色を変えた。
「は?…え、もう朝!?」
「そうだよ!!どうしちゃったのハイーラさん!?」
ハイーラは瞼を擦りながら、慌てて立ち上がった。
「朝ご飯の準備しなくちゃ!!」
そう言いながら、慌てて台所に向かおうとした。
しかし、ハイーラの足が止まる。ペルセも、その先の光景に、目を丸くした。
ーーーエプロン姿のマールが、台所から盆を持って現れた。
その盆には、ご飯と味噌汁が三人分乗せられている。
「…あれ〜?やっと起きたんだ〜」
マールは特に驚いた様子もなく、机のうえに配膳していく。それを、ハイーラもペルセも、何も言えずに見つめていた。
「も〜…ちゃんと布団で寝なさいって言ったのに〜…」
マールは若干呆れてため息をつきつつ、ハイーラを見つめた。ハイーラはそれに対し、気まずそうに視線を逸らした。
マールはそのまま、二人に背を向けた。
「とりあえずハイーラは顔を洗ってきて〜。ペルセも、シャワーを浴びようか〜。その後でご飯にするよ〜」
それだけ言うと、マールは再び台所の奥へと消えてしまった。
沈黙。
少しの間、ペルセは動くことができなかった。
ハイーラが完全に机で寝ていた。
それを分かった上で、あのマールが、食事の準備をしていた。
ーーー一体、どうしたのだろうか。
「…ほら、しゃんと動きなさい!」
ハイーラがペルセの背中を叩いてきた。
その痛みで、ペルセは我に返った。
ペルセは慌てて、風呂場へと走り出した。




