幸せのお裾分け
「どうしたの〜?」
「やっぱり、ペルセちゃんも嬉しいのよ。あんたがちゃんと、戻れたのが」
不思議そうに首を傾げているマールに、ハイーラは特に気にした様子もなく返している。
その間も、ハイーラは肉や野菜をゆっくりと食べている。だが、その一方でペルセは手を全く動かしていなかった。
もちろん、マールのことも嬉しい。ちゃんと、一緒に住めるようになったのだから。
でも、今日嬉しくなっていたのは、それだけが原因ではない。
「…それもある。けど…でも、今日、私もっと嬉しいことがあったんだよ!!」
二人にも、この気持ちを聞いてほしい。
ペルセは、勢いよく顔を上げた。
「ど、どうしたのよ?」
「あのね!あのね!私、今日お父さんとお母さんに会ったんだ!!」
ハイーラが少し引き気味ではあったが、ペルセは気にせずに話した。
その瞬間、ハイーラもマールも、持っていた箸を落とした。
箸が容器にぶつかる音だけが、耳に入った。
でも、そんなことでペルセは止まらなかった。
「でね!お母さんも泣きながら『会いたかったー』とか言いながら私を抱きしめてくれたし!お父さんも私を軽々と抱っこしてくれたし!あとね…!!」
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待って!?」
一気に話していると、途中でハイーラが止めに入った。
まだ言いたいこともあるのに。最後まで聞きなさい、といつも言っているくせに。
なぜ、止めるのか。少し、不満だった。ペルセはその不満を表に出すように、頬を膨らませていた。
「え、あなたいつの間に両親に会ったの!?親に会うならせめて一言ちょうだいって言ってたわよね!?」
「私もびっくりしたんだもん!!向こうからいきなり来ちゃったし!!」
言われてから、ハイーラとの約束を思い出した。
ただ、ペルセにしてみても、鍛錬後にいきなり両親が現れたのだから、どうしようもなかった。
もちろん、ハイーラからも言われていた。両親が、ペルセを拒む可能性もある、と。
でも、両親は拒むどころか、むしろ自分へ深い愛情を持ってることを感じ取れた。
ーーーこんなの、嬉しくないわけがないのだ。
「…両親は、どんな感じだったの?」
ハイーラは若干呆れたようにため息をつきつつ、ペルセに訪ねてきた。
ペルセの表情は、ぱっと明るくなる。
「お母さんはとにかく優しくて!お父さんとも仲良しで!!それでね!私にそっくりな顔だった!!」
興奮したように、ペルセは言葉を続ける。
「お父さんは、見た目はちょっと怖かったけど、優しく抱き上げてくれて!その腕は太くて、私の体を片腕で余裕で支えてくれてた!!」
ペルセの言葉は、再び止まらなくなった。
ハイーラ達にも聞いて欲しい。
ずっと欲しかったものを、ようやく手に入れることができたことが、嬉しくてたまらない。
その話を、ハイーラもマールも遮ることはなかった。はしゃいでいるペルセを、優しく見守るだけだった。
「あとね…。ママって言ったら、お母さんスゴく泣いちゃったし、パパって言ったらお父さん固まっちゃった」
ペルセはそう言いながら、首を傾げた。
その一言に、ハイーラ達は吹き出した。
「あっ、それ本当に言ったの!?」
「フフッ、メッチャ効いてる〜」
ハイーラ達は肩を震わせながら、静かに笑っていた。
そんなにおかしなことだったのか。ペルセは不思議そうに二人を見つめていた。
ひとしきり笑った後に、ハイーラが息を整えながら、口を開いた。
「…そういうことなら、今日は特別ね。存分に食べなさい!」
ハイーラは嬉しそうにしながら、ペルセの皿に肉や野菜を取り分けた。




