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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第四章 家族の絆
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親子再会の終幕

 そんな空気が、しばらく続く。 

 ずっと、このままでいられるのではないかと思えるほどに、幸せな時間だった。


 すると、そんな空気から引き戻すように、大きな咳払いが聞こえてきた。


「…あ〜…そろそろ、いいか?」


 音のする方を見ると、そこにはアモディエナがいた。しかも、かなり気まずそうな表情を浮かべている。

 もしかして、ずっとこの場にいたのか。完全に、存在を忘れていた。


 ーーー何だか、急に恥ずかしくなってきた。

 でも、クロニオスの腕の中から降りようとは思わなかった。


 居心地と安定感が、段違い過ぎる。


 しかし、アモディエナの次の一言で、ペルセも現実に戻された。


「…ペルセ。そろそろお迎えの時間だ。ハイーラ達がお前の帰りを待っているぞ」


 ーーーそうだった。

 今はここに、鍛錬で来ただけだった。


 あまり遅くなると、ハイーラ達が心配するだろう。

 それは、分かっている。

 それでも、離れたくはない。ペルセは、クロニオスのスーツの裾を掴んだ。


「…あの…もう少しだけ、このままではダメですか…?」


 ペルセはアモディエナに、精一杯のわがままを言った。クロニオスに抱き上げられたままのデメナまでも、不満そうに口をとがらせている。

 それに対し、アモディエナはため息をつきながら、頭を抱えた。


「…イアノが来るまでの間だけだぞ」


 呆れながらも、許可がもらえた。

 ペルセはその言葉を聞き、ホッとしたように、クロニオスの胸元へ再び体を預けた。


「…ったく…母娘揃って、お前らは…」


 クロニオスまでも、少し呆れているようだ。だが、そう言いながらも、奥ではかなり喜びが滲んでいた。

 デメナもそれに気付いたのか、何だか楽しそうに口元を緩めている。


「そう言いながら、嬉しそうじゃないですか」


 デメナのその言葉に、クロニオスは鼻で笑うだけで、何も反論しなかった。


 この二人は本当に、お互いのことをよく知っている。

 自分もこれから、これからこの二人のことを知っていきたい。

 強く、そう思った。


 すると、鍛錬室の扉がゆっくりと開かれた。そこには、イアノが立っていた。

 イアノは繰り広げられている光景を見て、一瞬固まった。


「…えーと…」


 イアノは近付きつつも、戸惑いを隠せないようだった。なかなか、珍しい表情を浮かべている。


 同時に、ペルセの体がクロニオスの体から引き離され、地面に降ろされた。


 ーーー何だか、寂しい。

 もっと、抱っこされていたかった。


 父の顔が、遠くなってしまった。

 首が痛くなるほどに見上げないと、見えなくなってしまった。


「…ペルセちゃん。帰りましょうか」


 イアノに声をかけられ、ペルセはそちらへ視線を向ける。目の前に、イアノの手がそっと差し出される。


 ペルセはイアノの手を握る。

 いつもと変わらない、優しい手だった。


「ペルセさん…!」

「…今生の別れじゃねぇんだ。また、会える」


 今にも駆け出しそうなデメナを、クロニオスが抑えながらそう言った。

 ペルセは、両親の方へと向き直った。


「…パパ、ママ。バイバイ…。また、会おうね」


 ペルセは小さく、二人に手を振った。

 その言葉に、再びデメナ達がぴたりと止まった。


「…イアノお姉ちゃん、行こっか」


 ペルセはそれを見届け、二人に背中を向けた。

 イアノは小さく頷き、ペルセの手を引いた。


 ペルセの頬は自然と緩み、足取りは非常に軽くなっていた。

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