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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第四章 家族の絆
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親子密着

 クロニオスはずっと、唸り続けている。


 ペルセはその様子を見ながら、父の腕へと視線を向けた。


 本当に、太くて強そうな腕だ。

 もしあの腕に抱き上げられたなら、自分が全体重かけても、ビクともしなさそうに思えるほどだ。


「私を抱き上げることは、できたのに?」

「おまっ…!?それを今言うのか!?」


 デメナの発言に、クロニオスが慌てて声をあげる。


 ペルセは目を瞬かせた。


 今、何と言ったのか。

 聞き間違いでなければ、父が母を抱き上げたことがあるようだ。


 でも、父の体格を見て、不思議と納得する。

 これだけ大きく、強そうな父なら、簡単にできそうだとも思えた。


「お父さん?」

「…な、何だ」


 クロニオスの反応は、若干鈍かった。

 でも、そんなことはどうでもよかった。


 ペルセは父の反応を気にも留めず、自身の両腕をクロニオスの方に突き出した。


「…抱っこ、して?」


 大柄な男性から抱き上げられるなんて、経験がない。

 純粋に、されてみたいという気持ちからだった。


 だが、クロニオスは完全に止まった。


 それを見て、デメナが思い切り吹き出した。

 ペルセは両腕を突きだしたまま、両親を不思議そうに見つめていた。


「…ほら、クロニオスさん。娘直々のお願いですよ?」


 デメナの肩が震えている。明らかに、笑いを堪えているようだ。


 そんなに、自分はおかしなことを言ったのか。ペルセは、首を傾げた。


 クロニオスは複雑な表情を浮かべて唸りながら、ペルセの背中へ、恐る恐る腕を回してきた。


 そして、そのままひょいと持ち上げられた。


「わぁっ…!?」


 あまりにもあっさり体が浮いたものだから、ペルセは思わず父の体に腕を回した。


 ーーーゴツゴツしてる。

 本当に、筋肉質な男の体だった。


「…これでいいのか?」


 頭上から聞こえてくるクロニオスの声は、気遣いを感じる優しいものだった。


 下を見ると、随分と高い。

 だが、ペルセの体を支える腕は、本当に揺らぎもしなかった。


 ーーー安心する。こんな安心感は、初めてだ。

 ペルセはクロニオス胸に、自身の体を預けた。


「ご満悦のようですね。少し、妬いてしまいます」


 デメナが静かに笑いながら、クロニオスの隣にやってきた。抱き上げられてるせいか、立っているデメナを見下ろせるのが、少し不思議な感じだ。


 クロニオスは軽く、ため息をついた。


「やれっつったのはお前だろうが」

「そうですけどね…」


 デメナは楽しそうではあるが、何だか若干不服そうでもある。


 一体、何が気に入らないのだろうか。


「…はぁ〜…お前は昔から、そういう面倒なとこがあるよなぁ…」


 クロニオスは呆れたように、大きく息を吐いた。

 そして、その直後ーーー


「きゃっ!?」

「こうしてやりゃ、満足かよ」


 クロニオスは、隣にいたデメナの体も、片腕で軽々と持ち上げてみせた。


 すごい。

 子供である自分ならともかく、大人の女性であるデメナをも片腕で抱えられるなんて。

 かなりの力持ちだ。


「ちょっと、クロニオスさん!?」


 デメナは文句こそ言っているが、全く抵抗をしていない。むしろ、その表情の奥に見えるのは、隠しきれない喜びだった。


 そういえばついさっき、デメナは抱き上げられたことがある、と言っていた。

 …本当のことだったのか。


「…お父さんとお母さん、仲良いんだね」


 何気なく、言葉が出た。


 クロニオスはデメナの案を全く否定せず、下手をすると求めてた以上のことをしている。さらには、マールとハイーラにも負けず劣らずの軽口のやり取りもしていた。


 それらを見てて、素直に思ったことだった。


 そう言われたデメナは、目をぱちくりさせた。

 一方のクロニオスは、露骨に目を逸らしている。


「そりゃあ…夫婦、ですからね」


 デメナは、当たり前のようにそう答えただけだった。


 夫婦。

 言葉としては知っているが、こんなに仲良くなれるものなのか。


 何だか、少しだけ暖かい気分になった。

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