02_07_02
「終わった!…完走できた…」
がっくりうなだれてつぶやくマガネ。結局最後尾でのゴールであったが、あの長い道のりをゴールまで走り終えたことに、マガネは、安堵と興奮を同時に感じた。ハンドルを持つ手が震えている。
「おめでとうございます。マガネ。長いブランクを越えての大健闘の結果は、今後のレースに参加する上での大いなる一歩となるでしょう」
オセロットグリーンのマシンAIの言葉に、マガネは、
「序盤の評価より、少しはましになったかい?」
と聞くと、オセロットAIは、
「レース記録を後でご確認ください。イグニッションキーのメモリに蓄えられた記録が、いずれ、さらにレベルの高いレースの足掛かりになりますよう祈っています」
マガネは、なんだか煙に巻かれたような受け答えに、ちょっと困った表情を浮かべると、
「レベル高くなれるかな?」
と聞くと
「のりしろだけはばっちりあります」
とオセロットAIが答えた。
「まだ初心者ですからね」
その言葉にがくっ、とするマガネは、ブリッジベイキャンプグランドのパドック練習エリアを周遊していくと、そのままゴールに向かって行った。
ゴールエリアで止まったティナは、オセロットシルバーを自動走行モードに切り替えると、シートから身を下した。そこに、駆け寄ってきたレイチェルがティナに抱き着いた。
「やったじゃん!ティナ!大健闘よ!あのユニバースのライダー相手に2位だなんて!」
と頬にキスを送るレイチェル。ティナもレイチェルの背中に手をまわして、応えると、。
「ありがとう先生」
と軽く答え、その視線をユニバースのビフとライアンコーチのほうに向けた。
ライアンは、健闘をたたえるように、ビフのその肩をぽんぽんと叩き、語りかけていた。ビフも何事か答えている。
視線をふとゴールに戻すと、ウルフブラウン、ベルとピンク、カルラ、ウルフブルーと続いて、うオセロットイエロー、エンディとゴールエリアに集まってきた。
「途中で巻き返せそうだったのに!くやしい~~~!」
ヘルメットを脱いだエンディが地団駄を踏んだ。
「大健闘よ!エンディ―!あんたもえらい!」
頭を抱いて、その頬にキスをするレイチェル。
「ほんとに、ここまで戦えるなんて思っていなかったよ!」
「ほんとほんと、まじですごいよ」
ユアンとテムジがエンディに向かって励ますように言うと!
「うーーー!でもーーーー!」
と悔しそうにうなだれる、エンディ。
「次の本大会で挽回してやろう!エンディ!」
声のした方に振り向くエンディ、そこには、カインが立っていた。困ったような表情を浮かべつつもサムズアップして近づくカインは、「僕も頑張るからさ!」と、照れ臭そうに笑った。
エンディはちょっと複雑な表情を浮かべつつも、気を取り直して、
「ああ!そうだな!」
と言うと、サムズアップで応え、カインに向かって、ニカッ!と笑った。
そんな様子を見つめるテムジの視界に、ゆっくりゴールに戻ってくるオセロットグリーンの姿が映った。
「マガネが、戻ってきた!」
オセロットグリーンがゴールラインを越えて、ゆっくりレイチェルたちのほうに向かってくる。
テムジが走り出した。オセロットグリーンを止めて、バイザーに手をかけたマガネに走り寄ると、マガネの両手をガシッ!と掴んでぶんぶんとその身体を振った。
「お、おい!テムジ!」
「ありがとう!ありがとう!代わりに走ってくれて」
喜ぶテムジに、マガネが困ったような顔を浮かべた。
「走り切るだけで、一杯だったけど…」
そんなマガネにかぶりを振って、テムジ。
「そんなことないよ!途中、ホントにすごかった!マガネ」
「そうだよ!マガネ、私も助かったしな!」
エンディが笑って答える。エンディのほうを見ると、
「マガネがいなかったら、多分私もリタイアだったよ。ほんとありがとうな」
と笑って答えた。
「でも、こんな飛び入りの仕方は二度と認めませんからね!」
レイチェルがちょっと怒ったように、諭すようにマガネに向かって言うと、マガネは恐縮したようにレイチェルのほうを見た。
「次は、きちんとエステート部のライダーとして参加しないとね」
そう言われて、マガネは、ぱっと表情を明るくするも。はにかんだような困ったような顔をして頭をかくと。
「は、はい…」
と、視線を落として答えた。そして、ちらと視線を上げると、取り囲むみんなの隙間から、ティナの姿が目に入った。ちょっと距離を置いてマガネのほうをじっと見つめるティナは、その視線に気づくと、プイっと横を向く。その様子を見て、マガネは、困ったような笑いを浮かべた。
「やっと御帰還か、スクラップ野郎」
背後からの突然の声に振り返るマガネ、見ると、ビフがこちらに向かって立っていた。
「んだと!」とビフに向かって答えるマガネに、ビフは、
「俺の視界にはまったく入ってこなかったが、完走できただけも褒めてやるぜ!まぐれじゃなきゃいいけどな!」
はっ!と笑って踵を返し、手をひらひらとさせて去っていくビフ。きっ!とにらみつけ、マガネは、ぎりぎりと歯を食いしばった。そんな様子に、レイチェルが、
「ま、次見返してやればいいじゃん!」
と抑えるように背中をポンポンと叩いた。
帰り際、ティナのほうをちらと見るビフ。彼の様子をじっと見つめるティナの視線と合った。彼女は目を離さずじっとビフを見つめた。ビフはそんな彼女に満足したような笑みを浮かべてうなずくと、そのままビフは、ユニバースのピットインスペースに向かって消えて行った。




