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ビーストライダー・マガネ【鋼】  作者: 時波彷徨
2章06~ウェストサム・ロードエリア~
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「て!てめえ!」


 ループロードに押し戻されていくウルフブルー、クラン。放物線を描いて、陸地側に向かって飛んでいく。その姿を見て、エンディは軽く笑みを浮かべた吐き捨てるように呟いた。


「ちくしょう!リタイアかよ…」


 蹴りを入れてコースに戻したのは、ラフファイトととられるかな…?どうでもいいか…、と空を仰ぐエンディ。

 

「もう少しで抜けるかと思ったのに…」


 降下していくオセロットイエローの機体がぐらりと傾いていく。下に抜ける空気の壁は、エンディを包んで、波間に反射する太陽光はあおられた機体を照らして輝いた。エンディは、オセロットに身を任せ、晴れ渡る青い空を仰いだ。


「エンディ!掴まれ!」


 突然の声に目を見開くエンディ。湖面沿いに向かって近づく緑の機体。そこにはオセロットグリーンの姿が見えた。湖畔沿いのしなだれ折れたロッジポールパインに飛び乗って走るオセロットグリーンが飛び出し、イエローに向かってワイヤーを射出した。





 ガシャン!と大きな音を立ててバウンドするウルフブルー。ループロードに戻された青い機体を地面に打ち付けると、ゴロリと転がりながらビーストモードに変形し、横にスライドしながら道路に立ち止まった。擱座気味に地面にうずくまったウルフブルーのハンドルからモニターに手を走らせ、クランは機体損傷具合を確認した。いくつかのダメージ表示がポップアップされるが、リタイアの表示は出ていない。クランはハンドルを握り返して機体を立て直すと、湖のほうに視線を走らせた。落ちていくオセロットイエローに向かってワイヤーが伸びて行くのが見えた。


「掴まっていろよ!」


 マガネの声に応えるように、オセロットイエローのワイヤーを掴む腕に力を入れる。湖面上に飛ぶオセロットグリーンが、体を反転して、自分が踏み台にした針葉樹林にワイヤーを放つ。飛んでいくワイヤーがしなだれた枝を掴みピンと張った。瞬間、マガネはウィンチでワイヤーを巻き取りながら、落ちていくオセロットグリーンとイエローの機体を引っ張り上げ、扇状の軌道に振られながらにウエストサム湖の陸地に向かって戻っていった。


 マガネとエンディの目の前に、張り出した岩棚の崖が迫ってくる。ヒューマノイドモードに変形して足を崖に向けるオセロットグリーンとイエロー。ワイヤーに引っ張られ、ぎりぎり湖の上を水上スキーのように走っていくオセロットイエロ―の足が水面をはねて水しぶきを上げる。その目の前にイエローストーンの黄金に輝く崖が迫ってきた。


 ガシイン!


 鈍い音がして、その場にたゆんで揺れるワイヤー。ばらばらと落ちていく岩石が湖面に落ちて波紋を広げていく、その上に、オセロットグリーンとイエローが、ワイヤーにぶら下がる格好で崖にとりつき、その場に風に揺られるようにとどまっていた。


「はあっつ!」


 大きく息をついて、慌てモニターを確認するマガネ、そして、エンディ。


 リタイアの文字は出ていない。


「よっしゃー!助かった!」

 思わず声を上げるマガネとエンディ。

「大丈夫かエンディ!」

「おうよ!たすかったぜえ!マガネ!」

「よし!今から引き上げるから、崖に腕をかけて、体を固定して!負担を少なくしてくれ!」

 言いながらマガネは、オセロットグリーンの足を崖の出っ張りに乗せて、姿勢を正す。すると、モニタにアラートが出た。どうやら、先ほどの崖側面の着地で、オセロットグリーンの足と腕の人口筋肉が損傷したようだ。


 なんとか、引き上げるまでは持ってくれよ…。


 と念じつつ、ウィンチを巻き上げていく。それに引っ張られる形でオセロットイエローの機体もゆっくり上に昇っていった。波間から離れていくオセロットグリーンとイエローの姿が湖畔の稜線に沿って伸びるループロード沿いに反射する湖面の向こうに見え隠れした。

ほかのライダー達は?とエンディが目を凝らすと、さっきまで近くに走っていた集団が、ずいぶん先まで進んでいる。どうやらゴールはもう目の前だ。

モニター上の光点を見ると、トップはウルフブラック、ビフ。二番手にオセロットシルバー、ティナ。三番手にウルフピンク、カルラ。四番手にウルフブラウン、ベルが続いている。


 ちぇっ!俺らは最後尾か…


 とマガネががっくりしたところに、メキメキメキ!っと上のほうから嫌な音が聞こえてきた。


 えっ!と上を見ると、ワイヤーがつかんでいるロッジポールパインの枝が折れて、下方にしなだれている。


「やばい!エンディ!壁に取り付け!」

「え!え!ないよそんな出っ張り!」


 と言っている間に、盛大に破片を撒き散らして折れていく枝とともに、オセロットグリーンとイエローが落下していった。


「うおおお!ちくしょー!」


 思わず叫ぶマガネだったが、その時オセロットグリーンのワイヤーが何かに引っかかってピンと伸びた。


 どどーん!と湖面上に大きな水しぶきが舞い上がった。


 ブクブクと沈んでいく枝葉と岸壁で大きく波がしらが跳ね返ると、その湖面の光にあおられて、崖にぶら下がったままのオセロットグリーンとイエローの機体に反射光が照り返った。自分が落ちていないことに気が付いたマガネが上を向くと。オセロットグリーンの伸ばしたワイヤーを掴むウルフブルーの姿があった。


「へっ!これでポイントの貸し借りは無しだぜ!」


 クランはそういうと、自身のアンカーワイヤーで後方のロッジポールパインを掴み、機体を崖際から落ちないように固定した。


「あ!あいつ!」

 驚くエンディ。その声を遮るかのように、

「よーし!上がって来いよ!オセロットグリーン!」

 クランがぶら下がったマガネに大きく声をかけた。

「おおー!わかった!」

 と答えると、ウィンチを回して、機体を引っ張り上げる。


 崖の上に到着すると、オセロットグリーン崖際に体を固定して、その上を乗り越えるようにしてオセロットイエローが上に上がっていく。伸ばした手をウルフブルーがつかんで、イエローを力強く引っ張り上げた。

 キッ!とクランを睨みつけるエンディ、クランがそちらを向くと、エンディはプイっと明後日のほうを向いて。


「貸だなんて思わねーからなー!」


 その様子に、思わず微妙な笑みを浮かべるクラン。

「どういたしまして。さ、次はアメフトライダーだ」


 とオセロットグリーンに手を差し伸べた。オセロットイエローも手を貸し、二人係で崖の上まで機体を引き上げた。その様子を見届けたウルフブルーは、ゆっくり後退していくと、


「んじゃ!先に行くぜ!」

 と踵を返して、ビーストモードに変形、湖畔の樹林帯を越えてウエストサム湖ループロードへ戻っていった。


「あ!あんにゃろ!」


 とその背中に向かって叫ぶエンディも、ビーストモードに変形させると、


「いそごーぜ!マガネ!」


 と言って、慌て、ウルフブルーの後を追って行った。


「ああ!」


返事をするマガネがビーストモードに機体を変形させると、右足がガクッと下がった。モニタ上にアラートが出ている。


「崖での着地の際に、右足と左手前腕の関節部分に損傷があります」


 とオセロットがマガネに向かって言うと、マガネはちょっとあきらめたようにため息をついて、


「OK、オセロット。ゆっくり行こう」

「了解」


足を引きずりながら応えたオセロットグリーンは、ループロードまでの道のりをよたよたと機体を揺らしながら戻っていった。






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