02_06_06
「おっしゃ!きたー!」
マガネとティナが、先頭を走る一団に追いついた。まさかの展開にピットインブースでレイチェルが叫び、隣で歓喜の声を上げるユアン、テムジに思わず抱き着いた。
「追いついた!おいついちゃったわよ!」
「ティナもすごいけど!あのウルフピンク、カルラもすごい!」
「抜ける気配を感じなかったもの!」
「ダンスだけじゃないんだね!すごいバランス感」
「いやいや!大健闘よ!もうティナったら最高!」
レイチェルが、ドローン映像から送られてくるオセロットシルバーに投げキッスを投げる。テムジは別のウインドウで、最後尾を走るオセロットグリーン、マガネの姿を見つめていた。
「マガネのオセロットグリーンも、ウルフブラウンを射程に入れている!」
「ほんとうに!彼、何年くらいブランクあるのか?」
信じられないとおどろくユアンに、テムジは、
「さあ、そういえば聞いてなかった」
とぼそりと漏らし、こんなレースに僕出てたら死んじゃうよ…と頭の中だけでつぶやいて、口の端を歪めて笑った。。
走るティナの視界にピンクの機体が滑り込む。ウルフピンクがややスピードを上げて走り始めている。見通しの良いストレートコースのその先に、ウルフブルーとブラック。そして2台のマシンに挟まれるようにオセロットイエローのエンディが見えた。
「よく頑張ったわね!エンディ!」
ティナは、前方を走るウルフピンクの後方に付け、オセロットシルバーのスピードを上げて行った。
ウルフピンク、カルラも、徐々にトップ集団との差を詰めていった。弾丸のように突き進むウルフピンクとオセロットシルバー。前方を走る三機の機影がぐんぐん近づいてくる。
ウルフピンクのテイルにぴったりつくオセロットシルバー。そして、その後方にウルフブラウン、オセロットグリーンと続いていく。
グランドループのストレートコースのその先、峠のS字のカーブを抜けると、ウエストサム湖を巡るループコースに繋がっていく。ここを抜ければ、湖畔のビーストライドピットインエリアにあるゴールまでは目前だ。
ウルフピンク、カルラとオセロットシルバー、ティナが僚機にデータリンクしたのは同時だった。推奨ルートの同期、相手の予測ルート、その二つはほぼ同じく、前方のS字エリアに入る前に、まっすぐ突っ切ってショートカットし、迂回してダック湖を外側に走るグランドループロードを内側に離脱、針葉樹林を空中起動して、ウエストサム湖のループロードに最短で乗り入れるルートに入っていった。
ウルフブラック、ビフとウルフブルー、クランがモニタ上で、リンクデータを確認した。ライドエリアの範囲を確認すると、確かに、コースエリアから走行可能な範囲が広がっている。そしてグランドループロードはロスが多いS字の連続であった。
オセロットイエロー、エンディは、ティナからのデータを確認した。
「ビーストライドは道なき道を行く、ハードエンデューロだもんね!」
エンディはにやりと笑う。スピードコースで、ごつい二機に挟まれてのロードレーシングは分が悪い、どちらかというと、不整地でのアクロバティック走行に自信のあるエンディは「順位を挽回するチャンス!」と鼻息荒く意気込むと、ティナに対して。Goodボタンで応えると、離脱ポイントを図り始めた。
後方で走るウルフブラウン、ベルは、リンクデータをイラっとしながら確認し、前方を走るウルフピンクとオセロットシルバーを睨みつけた。
「少なくとも、あの二台は刺してやる!」
舌打ちしながらGoodボタンを押して、カルラに応えた。
オセロットグリーン、マガネは、
「俺にもチャンスある?」
とこぼすも、オセロットAIが「わずかですが」と即座に回答した。
「上等!」とマガネは応えると、なるべく内側のショートカットを狙って滑り込んでいく。立ちふさがる巨大な樹林帯をちらと見上げて離脱タイミングを計りながら、Goodボタンでティナに返信した。
最大加速で走るエステートとユニバースのマシン。マップ上の走行可能エリアのバンド帯が広がていくと、ウエストサム湖へのショートカット推奨ルートの矢印がグインと伸びた。
離脱ポイントが迫る中、先に仕掛けるか、ウルフたちの動きに合わせるか思案するエンディは、アスファルトの線上をじっと見極めていると、前方のウルフブラック、ビフの巨体がジワっと迫ってきた。瞬間、S字に揺らぐオセロットイエローの機体がスピードを落とすと、前方のウルフブラックの機体がビーストモードに変形してロード脇に飛び出し、ワイヤーアンカーを射出して森の中に消えて行った。
「せんてをとられた!」
エンディも、慌てウルフブラックに続く。大きくバンクして、ワイヤーを射出、木の幹にワイヤーを絡ませ、追いかけていくが、エンディが飛び出したその軸線上に別のワイヤー打ち込まれた。見ると、エンディの軌道の内側に滑り込むように飛び出すウルフブルーの機体が、オセロットイエローの空中軌道と並んで飛び上がっていった。
「こいつ!こっちが飛び出す瞬間を狙って」
ルート争いで起こる機体のやむおえない接触は、ラフファイトとは受け止められない。
「相変わらず、脇があまいんだよ!オセロットイエロー!」
イエローを押しのけ、強引にその軌道ルートを確保していくブルーが、オセロットイエローを押し退けるようにルート上に割り込んできた。
「そうくると思ったぜ!」
エンディは、機体をヒューマノイドモードに変形すると、機体を反転させ、もう片方のアンカーを上方に撃ちだし、背中越しにウルフブルーの機体上方にとりついた。
「んだと!」 驚き見上げるクラン。
「Sorry♪」
エンディはそうつぶやくと、ウルフブルーの機体を踏み台にして前に飛び出した。
「くっ!」
機体バランスを失い失速するウルフブルー。「やろう!」と慌てるクランだったが、すぐさま別のワイヤーを前方に射出して、機体を立て直しつつ、空中に加速させると、オセロットイエローの後を追って行った。
「やるじゃん!」
と、その様子を見て鼻で笑うカルラ。離脱ポイントたどり着くとウルフピンクはビーストモードに変形した。続くオセロットシルバー、ティナそして、ウルフブラウン、ベルも、内側から追いかけるようにワイヤーを射出すると、三機は樹林帯の中に消えて行った。
オセロットグリーンマガネも、推奨ルートが示す離脱ポイントにやや遅れて到達した。
「あと少しで!ゴールです!安全走行でいきましょう」
オセロットAIがマガネに言う。「安全走行?」思わず聞き返すマガネ「無事にゴールしろってことです」ワイヤーを撃ちだすマガネが
「なんだそれ!」
と応えた。
走行可能エリアのバンド帯が示す限界線ぎりぎりを、緑色の光点進んで行く。ワイヤーに力強く引っ張られていくオセロットグリーンの機体も、ウエストサム湖に続く針葉樹林帯に向かって飛び上がって消えて行った。




