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ビーストライダー・マガネ【鋼】  作者: 時波彷徨
2章06~ウェストサム・ロードエリア~
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 見えた!


 エンディは目を凝らした。峠のコーナーをクリアーしていくウルフブラック、ビフの背中を視界にとられるエンディ。この加速を維持したままなら、一気にウルフブラックを抜くことが出来るかも!とスピードを上げて距離を詰める。コーナーのインから潜り込んで、アタックをかけようと、その加速をロックした。


バックモニタで後方を確認したビフが、鼻で笑ってマシンを立て直す。オセロットイエローの後方には、迫ってくるウルフブルーの姿が見える。ウルフブルーが後方にぴったり位置すると、ウルフブラックとブルーのマシンに挟まれたエンディは、三台並んでの峠のコーナーを攻めることになった。


 お互いの車間距離は1mもない。


 ウルフブラック、ビフの機体のシルエットに隠れるように、スリップストリーム位置を維持するオセロットイエロー、エンディ。もしコースを外れれば、一気に後方へ順位を落とされてしまう。スピードと機体バランスを維持して、ウルフブラックのペースに合わせていく。ビフは肩越しに、オセロットイエローの様子を確認すると、

「さて、ウエストサム湖までのグランドループの峠コース。このスピードでついてこれるかな?」

と、ギアをシフトアップ、アクセルをひねって加速した。


 突然の加速に遅れまいと、オセロットイエロー、ウルフブルーもそれに続いた。三機がぴったり並んで弾丸のようにコースロードを突き進んでいく。加速度に圧されながら、ウルフブラックに離されまいと必死に走るエンディは、ウルフブラックのコース取りを追って、ついていくだけでも必死だった。ウルフブラックとの距離差が伸びたり縮んだりする中、後ろのウルフブルーは、不安定なオセロットイエロー走りをきっちり追跡して、一定の距離を保っている。そんな姿に、エンディは、ウルフブルーが、いつでも追い抜けることをアピールしているかのように感じた。


 ウルフブラックが、攻めたコーナーリングを見せた瞬間、さらにペースアップした走りでエンディも応える。ブレーキングとともにジグザグに揺れる車体を抑えて、スピードを持ち直していくが、後方のウルフブルーは挟撃する形でオセロットイエローに左斜め後ろをかすめて接近してきた。


「くっ!」


 二台に挟まれコーナーに突っ込む。ハンドルを捕られそうになりながらも、スピードを維持するエンディ。クラッシュするかもしれない恐怖に駆られながら、ウルフブラックとブルーとの合間にルートを見つけようと頭を巡らせモニターに目を走らせると、その視界に、後方から迫る銀と緑の光点が飛び込んできた。


「来た!やっと来た!」


 シーション・レイク・オーバールックを越えて、南側に大きく傾斜した山の斜面に続く針葉樹林が風のように過ぎ去っていく。空中軌道で木々を越えて、斜面に沿ったグランドループロードに上空にオセロットシルバーとグリーンの機影が現れた。


「やっとおいついたぜ!」


 ドウン!と草地に着地をしてたたらを踏むオセロッグリーンとシルバー、山林道の開けた坂道を舗装路に向かって一気に南下していく。


「オセロットシルバーとグリーン!いつの間に!」


 モニタの光点を確認し、ギリっと歯を食いしばるウルフブルー、クランの頭にふと考えがよぎる。


 そうか、ハードエンデューロでのイエローストーンコースだもんな、実はあっちがルート的には正解なのかもしれない。


 そう思い直すと、クランは、乱れる気持ちを落ち着かせながら目の前のオセロットイエローを追うことに集中した。



 オセロットブラウンのベルがバックモニタ越しに後方の様子を見ると、オセロットシルバーとグリーンが斜面を滑ってグランドループロードに滑り込み、こちらに向かって迫ってくるのが見えた。


グリーンはともかく、あのオセロットシルバーは、必ず仕掛けてくる。


 ベルが、ライン取りを読みながらペースアップを図ろうとしたその時、ウルフピンクから、ブラウンにチャットが飛んできた。


 “ペースメーカーを自分に”


 ぐっ!と言葉を飲み込むベル。自分のほうが早く走れると、そこまで自信があるのか…と心の中でざわざわと嫌な気分が膨れ上がる。


 ビーストライド部でのキャリアは自分のほうが上なのに!


 エレメントスクールでエンデューロレースの大会で上位成績を多く納め、ユニバース学園には推薦枠で入ったベルだ。お金持ちの子息たちが通うこの学園では、中流家庭とは言わないまでも、それほど裕福でもない家庭の出身であるベルは、学園生活で、他の生徒と、ややギャップを感じる日々を過ごしていた。

 経済的に恵まれた子は、私生活も派手に過ごすことが多い。でも時にベルの経済的事情が、他の生徒たちと普通に過ごすことを許してくれない時があった。


 そんな時は、ビーストライド活動は都合よく利用できる。


 もともと学校の成績で単位を取るよりは、ビーストライドの成績で将来設計を行う予定のベルだったから、ユニバースの大会でメインライダーとしては必ず活躍しておかなければならない。


 しかし、ユニバース学園はビーストライド部のライダースキルが高い人材がそろう学校だ。普通程度の努力したのでは、その中に埋もれてしまう。


 そんな中、同学年に、ぽっと現れたカルラがビーストライド部に現れた。


 有名なアパレルブランドのCEOのお嬢様で、ビーストライドダンスで多くのフォロアーを持つ天才ライダーカルラ。彼女の恵まれたスキルは、ベルに大きな不公平感を与えた。


 彼女がいなければ、学年でトップクラスのビーストライダーなのに。


 チリチリと胸を焦がす嫉妬心が、今ベルの中で大きく膨れ上がる。


 私だって、あのオセロットたち以上の走りはできる。そう思い直すベルは、カルラのメッセージを既読無視をし、ギアを上げてコーナーを加速して、ウルフブラウンを走らせた。


 遠ざかっていくウルフブラウンの背中を見つめるウルフピンク、カルラ。


カルラは、小さくため息をつくと、その加速についていくように、自身のマシンのギアを上げて行った。



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