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ビーストライダー・マガネ【鋼】  作者: 時波彷徨
2章05~カイザーファウンテンエリア~
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「エンディたちが、フェイスフルファウンテンエリアに入る」


 ピットインブースのモニタで固唾をのんで見守るレイチェル。マップに線形に並ぶ光点がフェイスフルファウンテンエリアに迫っていた。


「ティナは、エンディとマガネに合流するつもりですかね?」


 ユアンが推奨ルート表示を見つめながら問いかけた。エンディのルートはまっすぐ最短のルートを目指しているが、ティナのルートはエンディを先回りするかのように、ウエストサムのゴールまで延びている。マガネの予測ルートは、彼女たちからやや外れた、レストポイント位置をかすめるようにされていた。


「無理に合流するよりは、それぞれで安全策を取ったほうがいいかもしれないけどね」


 レイチェルは答えると、マップを拡大表示した。ファウンテンエリアでとどまるオセロットシルバー、ティナ、ウルフピンク、カルラ、ウルフブラック、ビフの三人の現在位置が光点ピンで示される。カイザーファウンテンに阻まれた直近のレストポイントに位置する三人の中で、ティナが一番エリアのクリアラインにいることが分かる。単機では、ティナが先行して、カイザーファウンテンエリアをトップでクリア、ポイントゲットして、ウエストサムのゴールまで一気に畳みかけてほしいと思うところだ。

 モニタを見つめるテムジが興奮気味に声を上げる。

「得点差で、ユニバースに迫ることもできるし、何よりも、ティナがトップでゴールラインを切ることが出来る」

 思案するユアンが、テムジのほうを横目で見ながら腕を組んだ。

「しかし、ユニバース学園のライダーたちが全員エリアクリアしたら、ウエストサムまで、4対1でゴールまで戦わなければならなくなる」

「ゴール前のラストスパートでそれはきついわね」

 レイチェルが、ティナのバイタルデータをポップアップした。今、彼女は、心身共にレースにより良い状態で臨むことが出来ていることに安堵しつつも、一抹の不安も感じるレイチェル。そんなレイチェルにテムジが無邪気な様子で問いかけた。

「でも、ここまで食らいついてきたティナなら、もしかしたら」

 神妙な顔でその言葉を受け止めるユアンのその横でレイチェルはモニタを見つめながらつぶやくように言った。

「今は3人がリタイアせず、確実にゴールを目指せることを祈りましょう」


 ファイアウォール川の浅瀬を駆け上がり、エンディの機体が舞い上がった。モニタ上の警告表示が瞬き、目の前に広がる白い水しぶきは、ルートを妨害するかのように立ちふさがっている。間欠泉の柱を縫っていくルートが浮かぶと、エンディは減速することなく石灰岩の台地のうえをバイクモードで着地させて、巨大な柱としてそびえたつフェイスフルカイザーファウンテンに向かって機体を走らせた。目標地点は、推奨ルートが伸びる先のエリアレストポイント。まだ、冷めやらない間欠泉が前方から次々迫ってくる。オセロットイエロー、エンディはそれを左右に蛇行しながらよけ進む。


 ぴったりくっついてくる…


 後方から、大きく跳ね上がった青い狼の機体が空中で弧を描いた。

 ウルフブルー、クランが、オセロットイエローを追うように、走破ルートを絡ませてファウンテンエリアを突き進んだ。

オセロットイエローの進む先にはいくつかのレストポイントが存在している。クリア可能な推奨ルートから大きく外れてはいない動線を選びながら、一旦足止めの線も濃厚に残した走りだ。クランはオセロットイエローの機影を追いながら、思案を張り巡らせた。

 この状況下で、オセロットシルバーが、ゴールを最優先で目指せば、オセロットイエローとグリーンは、このファウンテンエリアのクリアを次のトライアルに譲ることなるだろう。

 トップ集団が飛び出すタイミングは近い。アクセルを持つ手に力を籠めつつ、オセロットイエローの後を追跡するクラン。その時、ファウンテンエリアに位置するトップ集団の位置表示の光点が移動を始めた。


 うごいた!


 ジリジリと水しぶきが下がり、徐々に視界が広がっていく中、レストポイントを飛び出していったティナを確認したビフも身を乗り出す。まだ周辺の間欠泉の動きが冷めやらない中、予測よりも早くオセロットシルバーが動いたことに驚くビフは、慌て、走破可能なルートを探しつつ、ティナの予測ルートも確認した。


 足止めはブラフか?判断が早いなティナ!


 ビフは、ぐんっと、ウルフブラックの重心を下げると、大きく前方にジャンプさせて水しぶきを乗り越えていった。


 カルラは舌打ちをすると、ほぼ同時にレストポイントから離脱すると、オセロットシルバーの位置と並行するかのように進んで行く。エリア内での接触は難しい位置だ。残念ながら、間欠泉エリアを抜けた段階で、カルラの役目は、後続のライダーたちのアシストに入る。さきほどの借りは返したいカルラだったが、荒ぶる感情をクールダウンすることに努めながら、アシストに最適な位置取りのために、ウルフピンクを誘導する。


 ウエストサムで、待ってなよ


 キスをするように、チュッ!と舌打ちをすると、目の前で下がっていく間欠泉が大きくはじけた。ウルフピンクはひらりとそれを回避すると推奨ルートに向かってスピードを上げた。


 まだ無数に間欠泉が乱立する中を走っていくオセロットシルバー。それに遅れまいと走るビフ。


その二つの光点がぐんぐんファウンテンエリアを抜けていくのを確認するクラン。どうやら、オセロットシルバーは、後続のライダーと合流せずにゴールを目指すことを決めたらしい。

 同じくモニター上のオセロットイエローのルート軌跡と前方を走るウルフピンクのルート軌跡を確認する。ウルフブルーは、いくつかのプランを照らし合わせて、自身の推奨ルートをユニバースのリンクデータとして送信、共有した。


 モニタ上に広がっていた間欠泉の警告表示が消えていき、エリア一帯を覆っていた水しぶきが収まっていく。石灰岩の凹凸を乗り越えていくオセロットシルバーとウルフブラックが、ビーストモードで大きくジャンプし、トレッキングルートを大きく超えていった。観光客が口笛や歓声で見送ると、ファウンテンエリアを抜けた二機は、その先のエリアゴール線に通じる山道を駆け上がっていった。


 モニタ上でウルフ部落、ビフとオセロットシルバー、ティナの位置を確認するクラン。その時、ファウンテンエリアに二つ光点が侵入してくるのが見えた。ウルフブラウンとオセロットグリーンだ。


 その瞬間、ユニバースの僚機からGoodボタンでの返信が帰ってきた。モニタ内表示から間欠泉警告表示が消えた、各マシンに緊張が走る。次の間欠泉活動再開までの80秒以内。これが、ライダー達に許されたエリア内活動時間だ。エリアを抜けるか、レストポイントを確保するかしなければ、巨大な間欠泉に巻き込まれてリタイアとなってしまう。慎重に頭の中で計算しつつ、クランは加速して行くオセロットイエロー、エンディを見つめた。間欠泉がなくなった平地をぎりぎりまでスピード上げている。


「ウルフィ!推奨ルート固定、ポイントPinを常時表示に」


 とウルフブルーのマシンAIに命じると、後輪の回転速度を上げ、オセロットイエローに向かって加速して行った。




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