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ビーストライダー・マガネ【鋼】  作者: 時波彷徨
2章05~カイザーファウンテンエリア~
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 四機のビーストマシンのモニタ上にルートが表示された。先行した機体が攻略した、カイザーファウンテンエリアのコースマップが線上に結ばれ、推奨レストポイントとルートマップを上書きしていく。


「カーテンコールが止んだら、レディファーストってか?」

 目の前の水飛沫が下がっていくのを目で追い、エンディは鼻で笑うと、警告位置で予測された間欠泉と、自分が先行してルート攻略するための位置取りを頭に叩き込んだ。飛び出した瞬間から、ルート上でのライダー同士の連携なんて、ほとんどうろ覚えの勘で進むようなものだが、攻略ポイントを外すことは、即クラッシュかリタイヤにつながってしまう。舌先でかわいた唇を湿らせ、エンディはスタートに備えた。


「カイン…うまくやってくれよ…」


 眉間にしわを寄せたエンディの目の前の視界が開けた。オセロットイエローが、機体を跳ね上げダッシュすると、レストポイントで待機していたオセロットパール、ウルフブラウン、ウルフブルーも飛び出してきた。


 岩場から転がるように落ちてきたオセロットパールが前転してビーストモードに変形すると、スピードを落としてエンディの脇に近づいてくる。見るとウルフブラウンも後方からスピードを上げ、ブルーは、後方へ入れ替わるようにしてバックアップ体制に入っている。

 カインが脇を通り過ぎながらサムズアップして、エンディの後方に回っていく。エンディも応えサムズアップすると、マップで表示された連携ポイントに向かって一気に加速していった。


 段差が激しく波打つ岩壁を四つ足で力強く越えていくオセロットイエロー。並んでウルフブラウンもビーストモードで予定された連携ポイントに向かっていた。お互いが二手に分かれて石灰岩の棚田を駆け上がると、所定位置に陣取り、後方を走るオセロットパールとウルフブルーに向き直った、2機がクロスして加速してくる先はレストポイントはなく、間欠泉が密集する危険なエリアだ。


素早く二機をコース前方に押しやって離脱し、先行した二機と連携して、さらに走破距離を伸ばさなけなければならない。そうすれば、最悪、オセロットイエロー、エンディと相手方のウルフブラウン、ベルは、このエリアから離脱して、フェイスフルファウンテンに向かうことが出来る。 


 後方に位置するオセロットパールから、アンカーワイヤーが打ち出された。エンディが駆るオセロットイエローはそれを受け取ると、ワイヤーを支えてオセロットパールの加速を手助けした。充分スピードが乗ったところで手を離すと、オセロットパールが大きくジャンプして虹色の間欠泉を越えて上空に舞い上がった。


 祈るような眼でカインを見送るエンディ。その上空で体制を立て直しながら対岸に降り立つカインのオセロットパール。後輪を滑らせながら、同じく対岸に降り立ったウルフブルーと交差するかのように入れ替わりルートの軸線が入れ替わった。


 ホッと胸をなでおろすのもつかの間、次は私の番だ!とエンディは、オセロットイエローを示されたルートに向かって走り出そうとした。


 瞬間。足元の警告表示が膨れ上がった。

「くう!」

 慌て飛びのくエンディのオセロットイエローの後ろに噴き出す巨大な水飛沫が沸きだした。


 危なかった!一瞬でも気を抜くと間欠泉飲まれそうになる。見ると並走するウルフブランも同じように間欠泉をよけながら前方に加速していた。次はエンディとベルの二人が、カインとクランに引き上げられルートを攻略する番だ。先行するウルフブラウンのベルが、自身のアンカーを撃ちだし、カインのオセロットパールとクランのウルフブルーに支えられる。ウィンチを巻き上げられ、大きくジャンプして間欠泉エリアを越えていくウルフブラウン、ベル。それを見届けながらやや迂回気味にタイミングを計るエンディ、足元の警告表示が徐々に膨れ上がっていく中、オセロットパールとウルフブルーがこちらに向きなおるのを今かと待ち構えていた。


 まるで白い化け物どもにとり囲まれていくようだ。


 激しい息遣いで走り抜けるオセロットイエロー。瞬間を長く感じる中、上空のウルフブルーのアンカーが巻き取られていくのを確認すると、エンディは同様に二機に向かってアンカーを射出した。前方を警告表示が覆いつくす中、エンディのオセロットイエローは大きくジャンプした。地上から飛翔していくマシンが、噴き出す間欠泉を越えて舞い上がっていく。山なりの軌道を描きながら、エンディは、ほうっ、と一息をついた。


 ウィンチでアンカーを回収しながら、頭の中でルート攻略を反芻するエンディはモニターマップに目をやった。予定レストポイントの候補と推奨ルートが表示されている。ウルフブラウンは、予定位置についたか、頭によぎるエンディだったが、突然モニタの表示が乱れ、着地ポイントが警告表示で埋められていくのを目の当たりにして思考が混乱した。


 え?どういうこと?


 間欠泉の密集エリアは後少し先のはず…と困惑しているところに、自分が攻略すべき予定のレストポイントが警告表示代わり、向かうべきポイントを見失ってしまった。


 このままだと、警告表示が広がる間欠泉エリアに突っ込んで行ってしまう。


 カインも同様に異変に気付いていた。ルートマップにエラーが表示され、リンクしたデータの修正が行われている。


「先行するオセロットシルバーとのルートデータ照合に乖離が生じています。ユニバースチームとのデータリンクを一度遮断することをお勧めします」


 カインはモニタ上に表示されていたレストポイントが次々消えて、移動していることに焦りを感じた。ルートデータがちぐはぐに表示され、正しいルートが分からなくなっていく。


 まさか!リンクしたデータがおかしくなっている?


 カインは、アクセルを握る手に力を入れて、思わず身を乗り出した。


 クランは、モニタ上に広がる警告表示をしり目に、下降軌道を描き始めたオセロットイエローの姿をじっと見つめていた。モニタ上で、ベルのウルフブラウンを差す光点はすでにレストポイントに収まっている。クランはにやりと笑うと、


 残念だったな、その先は時差で発生する間欠泉エリアだ。


 ベルのウルフブラウンは、着地した瞬間から、最も近いレストポイントを陣取って待機していた。

 クランが細工した仮想のルートデータは、どうやら相手方のAIも騙せたようだ。


「さすがだねえ!」


 広がっていく警告表示を見つめながら、ベルは、データリンクで偽ルートを滑り込ませるクランの手腕に感心しながら、自分がそんな憂き目にあってしまった時のことをふと考えて背筋を震わせた。


 吹き上がる水しぶきと、オセロットイエローの機影を見つめるベルは、「これで、一機リタイア♪」とほくそ笑んだ。


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