02_05_14
足元の水飛沫の勢いが増していくなか、加速するティナの視界の先、盛り上がった高台の向こうに、蛇行するファイヤーホール川が見え隠れする。あそこまで行けば、第二ファウンテンエリアが突破だ。
ビフと並走して走るカルラ。黒い狼と銀色のヤマネコが舞い上がる間欠泉を右に左によけながら突き進んでいく。行く先は、モニター上に表示される間欠泉空白エリア。二人は、ビーストモードでマシンを跳ね上げ、その場所にエリアラインを越えていくと、くるりと回転して振り向きヒューマノイドモードに変形した。
2人のその視線の先、はるか後方に位置していたウルフピンクが、機体が大きく左右に揺れる。飛び跳ね、ダンスするかのように間欠泉の合間を縫って走ってくるウルフピンクが、二本指を立てて合図をした。そしてジャンプすると、空中で大きく回転をして、ヒューマノイドモードに変形した
重心を落として構えるビフとティナのビーストマシン。
彼らに向かい、アンカーワイヤーを撃ち放つカルラのウルフピンク。そのワイヤーを受け取るビフとティナが、重心を支えるように体を固定すると、ウィンチを巻き上げたウルフピンクは、二人に支えられてさらに大きく空に舞い上がった。
観光客の間から大きなどよめきが起こる。
ウルフピンクは、天頂で姿勢を制御すると、自身のワイヤーを収納して、二人に向かって大きく体と手を広げた。その姿を確認したビフとカルラは、ウルフピンクに向かって自身のワイヤーを撃ちだした。ウルフピンクがその二人のワイヤーをつかむと、ビフとティナは同時にバイクモードにチェンジして加速し、ウィンチを巻き上げながらジャンプして、ウルフピンクに向かって跳ね上がった。大きく後方に回転しながら体の重心を制御し、二人の空中軌道を引っ張り上げるウルフピンクにひかれるように、そのジャンプ軌道をさらに超えるようにビフとティナのマシンが、大きく弧を描いて飛んでいった。
三機の機影が空中に舞い上がる、そのはるか下の平地から、まるで彼らのジャンプ軌道を、下から祝福するかのように、再び間欠泉の水飛沫が吹き上がった。その姿に、
観光客は大きな歓声と口笛を上げた。モニターを見つめるレイチェル、ユアン、テムジも驚きの声を上げた。ユニバースのブースで、その様子を見ていたライアンコーチも、感心したように口の端を上げて満足げに笑みを浮かべ手をたたいた。
空中を放り出されたティナは、舞い上がった空から地上の光景を見ていた。
自分の空中軌道がいかんなく発揮できていること、そして、その運動性能をユニバースとビフとカルラによって引き出されていることに一種の快感を覚えるティナ。
そう、自分は、自分の力を発揮できるビーストライドがしたい!
水飛沫の向こう、地上の間欠泉をはるかに超えて、見ているみんなが自分の走りを祝福しているかのように感じると、空中を舞いながら、沸き上がる感情に、ティナの顔の緊張がほぐれていく。
ㇵっ!と木を持ち直して横を見ると、ビフのウルフブラックが地上に着地するため降下姿勢をとっていた。
後方のカルラも視界に入る。恐るべきなのは、彼女の身の軽さと姿勢制御の能力だ。とっさのコンビネーションがうまくいっているのは、彼女の的確なライドサポートがあってこそだが、自身のテクニックと重なる部分で高い能力をもって見せつけられていることに、ティナは喜びと苛立ちを感じる自分を感じた。
もしかしたら、あれで全然本気を出していないかもしれない。
心の中で軽く戦慄しながら、ぞくぞくするような期待も心に抱くティナ。
平地に広がる間欠泉を一気に超えた三機は、バイクモードにチェンジして着地すると、大きくバウンド、ドリフトして、それぞれにスラローム軌道を描きながら第二ファウンテンエリアの最後のルートの走破に向かっていった。前方には、まだ警告表示がいくつも点灯している、それら間欠泉をよけるために、三機は一気にエリアの突破を目指して、後輪の回転を上げ突き進んでいった。




