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ビーストライダー・マガネ【鋼】  作者: 時波彷徨
2章05~カイザーファウンテンエリア~
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02_05_13

 巨大な水飛沫が下がってくると、ベルは、前方に目を凝らした。


そろそろ開始タイミングだ。後方のオセロットイエローが飛び出した後、自分はその対角に向かって、自分の操るウルフブラウンを進ませなければならない。


「さあ、出てくるかしらね」


 肩越しに振り返り、岩陰に隠れているオセロットイエローの気配を伺うウルフブラウン、ベル。次第に収まっていく水しぶきの向こうから岩棚が見え隠れした瞬間。


 来た!


 岩陰から飛び出す、黄色いヤマネコの姿。オセロットイエローが中央ルートを突っ切って、まっすぐ加速してきた。

 

「ウルフィ!クランが送ってきた推奨ルートから合流路を算出して」


 ウルフブラウンのモニタに、マップと予想進路のラインが浮かび上がる。ベルは高台から平地へ飛び降りたち、バイクモードへチェンジすると、さらに先陣を切るように、前方へ加速していった。


 エンディは示されたルートデータを追跡した。先行するティナと、ユニバースの二機が辿ったルートデータを思い出す。ぶっつけ本番とは思えないそのルート取りは、まるで絡み合うように伸びてワルツでも踊っているようだった。


 そのデータが共有されることが、自分たちルート攻略にプラスになっている。


でも…、


 エンディに、ふと、思考に暗い影がよぎった。


 カインは、他の三人が、バイクモードで先行して走り出したことを確認すると、後を追うように飛び出した。ユニバースを囲むように陣形を組むと、石灰岩の平地を縦に長い列を作っていく。カインは、東に連なる岩棚に沿って、回り込むようにウルフブルーへと接近していった。


 エンディが、ベルとカインに挟み込まれ、三機がスラロームしながら突き進んでいく。熱水泉がエリアを埋め尽くす前に、4機ともに、より遠くのレストポイントまで歩を進めなければならない。エンディがモニタを見ると、エリアの警告表示が大きく明滅し始めていた。


 そろそろ、間欠泉の噴出が始まる。


 前方を向くとウルフブラウンが、ルートをそれて右前方にある巨大な石灰岩の岸壁、マンモススプリングへと駆けあがっていく。エンディは、軌道をそちらに寄せつつモニタ上の予測レストポイントを確認すると、ウルフブラウンが岩場の上に駆け上がり、その頂上で反転してエンディのほうに向いた。

 

 オセロットイエロー、エンディが、ウルフブラウン、ベルに向かってアンカーワイヤーを射出した。受け取ったウルフブラウンがワイヤーを固定して衝撃に備える。瞬間、オセロットイエローの足元から間欠泉が噴き出した。しかし、合間を縫ってそれを越えると、ワイヤーの遠心力を使って斜面を駆け上がり、その先の高台に向かって大きく跳ね上がった。


 ワイヤーから手を離すウルフブラウン。


 オセロットイエローは、ウィンチでワイヤー回収し、断崖の亀裂を乗り越えていくと、その向こうの高台に向かってジャンプして高台のてっぺんに、手を大きく広げて、その頂上にとりついた。

「うっげええ!やべえ!」

 ずり落ちそうになるところを何とか体勢をととのえ、エンディはその場に留まった。


「ちっ何やってんだあいつ!」

 クランは舌打ちすると、ビーストモードに変形して、岩棚の崖を横殴りに駆け上がっていく。もたもたと向きなおるオセロットイエローの姿を確認すると。

「ちゃんと掴んでくれよ!」

と、両腕に仕込まれたアンカーワイヤーをエンディとベルに向かって射出した。

 慌て掴むオセロットイエロー、そしてウルフブラウン。

 グイッと引っ張ってワイヤー固定を確認すると、ウルフブルーが、二本のワイヤーに引っ張られるように、上空に向かって大きく飛び上がった。


 高い!

 空高く舞い上がる、ウルフブルーの機影を見つめ、ゾクゾクっと背筋に虫が這うような不快感を覚えるオセロットパール、カイン。思わず歯を食いしばった。


 虹色の間欠泉を越えて、対岸へ向かってダイブしていくウルフブルーが、ウィンチを巻き上げ自身のワイヤーを回収しすると、地面にドリフトして着地し、機体を持ち直した。


 次は自分の番だ…と身を固くする。カインは、両側に展開するビーストマシンたちが自分に向きなおったのを確認すると、ウルフブルーに続くように、ウルフブラウンとオセロットイエローに向かって狙いを付けた。警告表示が強くなっていく。目の前のエリアに白い水蒸気がもうもうと立ち込め視界をふさいでいく。カインは、オセロットパールは腕を展開して、ワイヤーを射出した。


 モニタ上の警告表示が大きく点滅し、アラートの音がシールドの中に響く。


 空中に放り出されたオセロットパールが空に舞い上がり、広がっていく白い水しぶきと蒸気を越えて、大きく弧を描いていった。その瞬間、トレッキングエリアでレースの様子を見ていた観客は歓声上げ、中央エリアを大きく噴き出した水しぶきが覆っていった。カインの眼下に中央エリアの光景が広がっていた。地上からの高さを認識したカインの目が大きく見開かれ、体が恐怖で強張った。


 上空を舞うように飛んでいくカインのマシン。ワイヤーの手を離し、その軌道の先を見つめるエンディとマガネ。カインの着地先のマンモススプリングが迫ってきている。しかし、カインのオセロットパールはワイヤーを巻き上げることも、姿勢制御をすることもなく、ただ降下軌道をたどっていた。

「カイン!」

「着地姿勢をとれ!カイン!」

 叫ぶエンディ


 大きく息を弾ませるカイン。体がすくんで動かない。


 うごかなきゃ…でないと失格になっちゃう…


 上がる息をこらえて、ハンドルを握りしめるカイン。オセロットパールはヒューマノイドモードにチェンジし、四つん這いになると、その岩にとりついた。しかし、降り立った場所で足場を確保できず、がらがらがら!と転がり落ちていく。

「カイン!」

 中央エリアを埋め尽くしていく間欠泉の水飛沫。その白いカーテンが、エステート部員のお互いの機影を飲み込み隠していった。


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