02_05_12
岩場の上に立つティナの目の前は、舞い上がった間欠泉の白い水しぶきで覆われていた。
向かいには。ウルフブラック、ビフがいるはずだ、水しぶきの向こうからこちらの様子をうかがっているだろう。
ティナは、後方のカルラ、ウルフピンクがいるであろう方角を見た。ヒューマノイド形態で朽ち果てた巨木の先端に立つウルフピンクがカーテンの向こうに見え隠れしている。カルラも、ティナとビフのほうをじっと見つめていた。
ティナはモニタに目をやった。データリンクしたマップデータ上で、点と線で結びついたレストポイントと推奨ルートが変化しながら結びついたり離れたりしている。後方にはカインとエンディのマシンの位置情報が明滅していた。モニタ上で、彼らが今、対峙しているユニバースのウルフブルーとブラウンにデータリンクしたのは確認していた。
うまくいけば、最後のファウンテンエリア、フェイスフルカイザーでは自分たちに追いついてくるかもしれない。
ちりちり胸を焦がされるような気分にさいなまれるティナ。ふっと目を伏せると、モニターマップをスライドさせてさらに後方のエリアに目をやった。
イエローストーン川に沿って走るマーカー。マガネのオセロットイエローだ。
ふと視線が緩むティナの脳裏に数年前のマガネとビフの姿がよみがえってきた。
まだジュニアになりたての自分たちが、ポケットビーストライドのレンタルレースで参加していたころの記憶だ。
いがみ合うマガネとビフは、クラッシュして、マガネはビーストライドを止めてしまい、ビフは学校を移ってしまった。
ティナは一人残って、ずっとビーストライドを続けてきた。
はじめは、得意が高じて、好きで続けていたビーストライドだったが、今のティナにとっては、進学と将来のための大きな武器だ。経済的に苦しい、自分の家計を支えるためには、優秀な成績をたたき出して、ハイスクールに上がると同時に、スポンサーをつけるくらいの成績を叩き出さないと、進学後の家計を安全に支えることは難しい。
ただの思い付きでレースに参加したマガネと、ずっと練習を積み重ねていた自分とはわけが違う。
正直、今のマガネに期待は寄せていないティナだったが、マガネがここまでついてくることは意外だった。でも、別に見直しもしていない。
せっかく大見得きって参加したんだから、つまらないレース結果を残したら承知しないからね…。
心の中でそうつぶやくティナ。目の前の間欠泉の勢いが徐々に収まり、モニタの警告表示がしだいに小さくなっていった。まわりにもうもうと立ち込めていた水蒸気の煙が薄く消えていくと、目の前にカイザーファウンテンエリアが広がっていった。




